「商売っけ」の出し方を考えるバイヤー

「商売っけ」の出し方を考えるバイヤー

「なんだか、アグレッシブに動かれているようですね~」

電話口で忌々しい声がする。長年取引を行っているあるサプライヤーの社長から直々の電話だ。滅多に顔を見せないその社長から電話に、一体何事?と思えば、私の動きをどこかで聞きつけての「警告」が目的らしい。

「そんなにうちは高いですか?これまでの長い経験は、簡単に他ではね~新しいところもなかなか見つからないでしょう?」

もうココまで来ると脅しだ。何をおっしゃっているんですか?どっからそんな話を仕入れたんですか?と言っても、のらりくらりではっきりしたことは言わない。でも、最後にこういって電話を切った。

「そんなにうちを嫌わないでくださいよ~今度是非お考えをお聞かせ願えませんか?一回チャンスをくださいね。よろしく御願いしますよ」

「そうですね、こちらもそのような機会があると有り難いです。よろしく御願いします」

しかし「いつにする?」って会話は続かない。こういうのを「社交辞令」と言うんだなぁ~と思って受話器を置く。そして「負けるものか」と自分へ言い聞かせる。

なんか映画やドラマのような世界だが、ここ数ヶ月のうちに実際に私が体験した話だ。電話の主の会社は、確かにもう数十年来の取引を行っている会社。言うなれば、無くてはならない重要なサプライヤーだ。ただ、その取引の実態を一つ一つ見ていくと、ちょっと疑問に感じることが多い。QCDのいずれの分野にも「ん?!」を思わざるを得ない点が存在する。そして私が感じている最大の問題点は、ある製品に関して一社独占状態であること。小さなメーカーとはいえ、一社独占状態へ持って行った相手の営業力には敬意を表さねばならない。最適購買を追い求めた結果、一社へ集中させるとの結論へ到ったのならば、それでハッピーだ。でも、一社独占を10年以上も続けているってのはいかがなモノだろうか?

その社長は、その地域・業態の「顔」とも言うべき存在だ。実際新規サプライヤー開拓の過程で、現在発注しているそのサプライヤー名を出した途端に、見積提出を辞退されたこともある。私が見積依頼を行ったサプライヤーの中に、どのような形かは見当もつかないけど、その社長へ見積依頼があったことを話したサプライヤーがいると言うことだ。

私が見る限り、どうしてもそのサプライヤーでなければならないという理由はない。そして他に製作可能なサプライヤーを探すのが私の役目。やるべき事をやっているのに、やんわりと阻害される。まさにバイヤー冥利に尽きる場面だと思う。絶対にここで自分の行動を歪めてはならない。

電話を貰った社長が経営するサプライヤーとの取引を止めようとは思っていない。もとより自社の事業が止まってしまうからだ。それでは私のアクションの意味がない。ただ、バイヤーの本能により、現状に疑問を感じ、その疑問への答えを見出そうとしているだけだ。

商売を失いたくないのは誰も同じ。でも一定の緊張感がない中では、進歩・改善は期待できない。もっと別な角度から「商売っけ」を前面に出して欲しいなぁ~と思うのだけれど。弱小発注者を脅してもしょうがないでしょ~もっと建設的な何かを生むアクションができるんじゃないですか?と思う。

厳しいといっても、まだまだ守ることだけに固執することが得策と勘違いしている輩が多い。数ヶ月経った現在まで「お話をする場」はもたれていないけれども逆に今度私がその場を設定しようか?と思っている。それは、私が行っている新規サプライヤーの開拓が不調であるからではない。むしろ順調に取引開始に近づきつつある。そんな新規サプライヤー採用という武器を使わない手はないだろう、そう思っている。どう使うかはよくよく考えるとして。

電話をくれた社長と笑顔で談笑する日が待ち遠しい。

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