エンジンが消えた工場

エンジンが消えた工場

先日の報道によると、トヨタ自動車はインドの部品工場でエンジンを生産するという。ついにエンジンである。先進国であればエンジンの製造は難しくない。しかし、このセンシティブなパーツは、新興国となるととたんに難しくなる。これがこれまでの業界の常識だった。

しかし、トヨタ自動車は2010年末発売の小型車については、ついにエンジンのインド生産を開始する。これはかなりエポックメイキングな出来事である。ただ、このこと自体を報じるメディアはさほど多くはない。いつだって大きな変化はこのような小さな動きから始まるものかもしれない。

おそらく、日本から指導者が訪れ、現地人スタッフにさまざまな指導を実施するはずだ。それが簡単だとは私は思わない。しかし、インドスタッフが生産することは不可能だとも思わない。すぐ近い将来に、インド品質レベルが先進国レベルになるだろう。いつだって技術の移転とはそのようにして広がってきたのだ。

この記事のタイトルは「エンジンが消えた工場」とした。

もちろん、すぐに消えるわけではない。しかし、日本技術の結晶と思われてきたエンジンがもはや日本を飛び出す日は近づいている。製品は、その国特有技術のものを産み出しても、いつか後進国が追いついてくる。先進国は常に新たな特有技術製品を生み出す宿命にあるのだ。

では、日本のものづくりの特有技術製品とは何だろうか。きっと、自動車業界にいる人であれば、ハイブリッド技術だというだろう。あるいは、電気自動車技術と語る人もいるだろう。なるほど、それらの技術はたしかに後進国から頭一つ飛び出ている。先進国の中でもダントツだ。

ところで、その次の技術は――?と問うたときに、なかなか一手がない。インドはエンジンを作るまでになった。ハイブリッド技術だって時間の問題だろう。その次は何か。これは単なる生産地移管ではない。地殻変動を示す、一つの象徴なのだ。

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