バイヤー「バカ一代」(1)

バイヤー「バカ一代」(1)

「そんな心配してもらわなくて結構!!」

ある会社の会議室でのこと。

バイヤーはその会社に価格交渉をしに行っていた。

自社の関連企業であり、出向・転籍者がたくさんいた。

数時間におよぶ営業マンとの交渉が終わったときに、その営業マンは「まぁ、せっかくお越しになったんだから、何人かご紹介しますよ」と言った。

その営業マンのアシスタントをしている女性や、上司などを紹介された後に「あの方も紹介しておこう」と言われた。

自分の会社の人なのに営業マンが「あの方」と呼ぶ?

「あの方」とは、そのバイヤーの部署出身であり、役職者として転籍した人のことだった。

物腰の柔らかい対応だったが、「今は大変だ」という内容のことを何度も繰り返していた。

「ほら、私なんかずっと購買にいたでしょう。だから、『販売する』ってことに不慣れで。それに、そちらに出す見積りのチェックとか」

「ああ、なるほど。大変ですね」と最初は聞いていたバイヤーも、徐々にイラだってきた。

「長い間購買にいるとね、態度なんかも『俺の方が上だ』みたいな感じで取引先に接しちゃうことがあるでしょう。そういうのが染み付いちゃうと、のちのち大変だから・・・」と言われたときには、ウンザリしていた。

そして最後に、こう言われた。

「まぁ、あなたもそうならないように気をつけてください」

バイヤーはついこう言ってしまわなければならなかった。

「全くそんな心配はご無用です。先輩方のようにはなりませんので」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

社会人を始めて日の浅い頃に、このような大先輩方と多く出会ったのは、誠に幸せであった。

もちろん皮肉である。

ちなみに、上記の「ある方」はこうもおっしゃっていた。

「購買に関わることは何でもわかるんだけどねぇ。営業とかってなっちゃうと、全然わかんないし、経理的なこともちょっと購買と違うもんねぇ。購買一筋だったからなぁ」

購買バカ、というわけである。

「バカ」という表現を使ったが、これはホメ言葉ではない。念のため。

本当にバカだと思う。

これまで、何人のバイヤーが取引先企業に「経営指導」なるものをやっているのだろうか。

「こうすりゃもっとよくなるじゃん」
「なんでこんなことできないの?」
「こういう手法をとってみるべきだ」

いくらでも言葉は思いつく。

そういう言葉を何度も発し、取引先に対して上の立場から偉そうなことをやってきた挙句の姿が「何にもわからなくてねぇ」ではブラックジョークにもならない。

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