バイヤーになって感じた最初の壁 2(牧野直哉)

バイヤーになって感じた最初の壁 2(牧野直哉)

バイヤーにはなったけれど、どうやって仕事をすればいいのかがわからない。そんな中私はあるサプライヤーに暴言を吐きます。 そんなちょっと思い出したくない、でも忘れられない思い出を前回お話ししました。

暴言を吐いてもなお、悶々とした日々を送 っていました。営業時代は、帰宅時間も週のほとんどが終電でした。そして会社に残らずとも飲みに繰り出し、やっぱり終電で帰宅している生活。それが郊外の工場勤務になりました。自分の仕事をどのように行なうべきかわからないまま、定時で退社し18時台のニュースを自宅でみる生活です。私はテレビが好きです。暇さえあれば、何時間でも見続けることができます。最近になって思うことは、テレビを見ている時、ほとんど何も考えていないんですね。だから何時間でも見続けることができる。定時退社でも、眠りつく時間は依然と変わらない、そんな生活を続けていました。

生来の貧乏性(笑)もあって「何かしなきゃ」という思いには駆られています。実際に日々の仕事では、毎日納得のいかない日々です。同期入社の同僚とは、低減額 合計で10倍以上の差をつけられていました。めちゃくちゃ焦っていました。でも、何をどうすればよういのかは、皆目わからないままでした。

そんなときに「教育訓練給付金」という制度を見つけます。自分の能力開発に費やした学校や通信教育の受講料が、総額の80%、上限30万円、まで支給されるのです。大学を卒業して以来、正直に言えば、大学時代もろくに「勉強」なるものをおこなっていなかった私は、自分でやりたい勉強を探すことにしました。そして中小企業診断士の資格取得をめざすことにしたのです。

当時の中小企業診断士は、今の制度とは少し異なっていました。私は製造業のバイヤーでしたので、工鉱業部門での資格取得を目指します。通学か、通信か。意思の弱い私は、通信では絶対に続かないであろうとの判断で、通学を選択します。それから約 1年間、土日は通学か図書館で、平日も一日2時間机に向かいました。一次試験は8科目。二次試験では論述 、そこで合格すると2週間の研修を経て、はれて中小企業診断士と名乗ることができるものでした。

毎日定時帰社だったので、一日二時間の捻出はさほど苦にはなりませんでした。夜の付き合いや遊びに行くときは、会社の昼休みに30分を確保したりもして、なんとか 勉強を継続させていました。同じ学校で、工鉱業部門を受験する同期生が8人いました。年齢もまちまちの8人でしたが、授業が終わってから一緒に復習したり、授業のない週末も集まって勉強会を開いたりしていました。20代後半になって、勉強って楽しいな♪と初めて実感し たのです。

一方、仕事は依然と変わらない状況を続けていました。どうやってバイヤーとして仕事をしてゆけばいいのか。バイヤーとして目指すべき目標を見いだせて いなかったのです。中小企業診断士の各科目を学ぶうちに、社内の関係各部署の仕事への理解が深まってゆきます。一端の営業マンとして仕事ができていたつもりでした 。実際は社内の多くの関係者の協力を経て御客様へ製品を納めることができていた。そんなことが、中小企業診断士の勉強を通じて、改めて実感できたのです。そして、調達・購買部門と他部門との繋がりの部分 にはいろいろな問題があることにも気づきました。関連部門の業務内容の理解が浅いことが原因です。いうなれば、100m走で、スタートからゴールへ向かってまっすぐに競技場の中を走れば良いにも関わらず、一旦競技場を出て、42.195km走ってゴールへ飛び込むようなものです。非効率ではあるけれども、それまでの実績 という理由だけで見直しされない様々な業務の存在が目につくようになりました。

当時、私の勤務先でも御多分に漏れることなく「小集団活動」が行なわれていました。直接部門のそれは、効率改善へ直結するために積極的な活動が行なわれていました。しかし調達・購買部門では、どうやって報告書をまとめるかといった不毛な議論が繰り返されてきました。課のメンバーが一同に会すにもかかわらず、決まった発言者によるそこそこの結論づけ。大多数の参加者の思考は停止したまま時間が過ぎてゆ きます。そんな不毛な活動は、月初の金曜日の朝に行なわれていました。

釈然としない小集団活動の翌日は学校です。週末に合った受験仲間に、前日の小集団活動の様子を話しました。愚痴ですね。そして、将来的に中小企業診断士になった暁にも同じような事態に遭遇することはあるだろう、どうすれば良いのかと話し合うことにしました。 名付けて、内実の伴わない小集団活動。そこで参加者の一人から、こんなアドバイスを貰います。

「自分の好きにやったら」

当時、若手の主任が、小集団活動のみならず、課全体の方向性を実質的に仕切っていました。まさに課長の右腕です。営業マンとしては自信を持っていた私も、調達・購買に関しては全く 素人。自分で小集団活動を仕切るなんて夢にも思っていません。そんな自分の想いを話すと、こう切り替えされたのです。

「だったら、その人が仕切りやすいように、楽になるようにするには何をすればいいかを考えたら。例えば、議事録をまとめるとか」

なるほど~。私は素直にそのやり方を取り入れます。以降、小集団活動のみならず、打ち合わせや会議では、積極的にメモをとって、議事録を作成したのです。当時、電子メールのアカウントが各自に配布された直後であり、まとめたメモ・議事録はすぐにワード 化して配布していました。文書管理用にスキャナーが導入されてからは、ホワイトボードの内容をそのままPDF化して配布していました。そして、いつしか会議や打ち合わせでの私の指定席は、ホワイトボードの前ということになっていました。

ホワイトボードの前って、議論が停滞していると暇です。書くべき事が出されないわけですね。そして、出席者の発言を理路整然にまとめようとしているので、 話を聞こうとしているし一生懸命に考えています。当然、こうすればいいんじゃないかとアイデアが浮かんでくるんです。そして、余りにも停滞の度が過ぎると、持論を披露します。バイヤーになりたての私の提案ですから、ベテランの皆さんからは 、「罵声」というご指導を頂きます。(んなこと、できるわけねーじゃねーかとか、素人が何言ってるとか、発言当時のまま再現)罵声を浴びせられとてもくやしい 、でも自分が正しいという自信も無い。私はジレンマの真っ直中にいました。

仕事もできないし、起こしたアクションには罵声を浴びせられる……そんな中で、私はあることに気づきます。調達・購買部門としての解が、実は部分最適であること。それは、他部門の業務内容 の無知が原因であることです。しかし、具体的な確固たる証拠を掴む迄はあくまでも仮説にすぎません。関連部門の業務内容は、中小企業診断士の勉強の進捗で、いろいろなことを理解するに至っています。が、それが自社の実態に即しているかかどうか、まだわからないのです。 ところがこの状態。今思い返すと、自分でできることを見いだしつつあったのです。

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