リスクヘッジとは部品サプライヤーだけなのか

リスクヘッジとは部品サプライヤーだけなのか

先日のアイスランド火山噴火で、部品サプライヤーの納入が止まってしまった。日産自動車でのことだ。同社によると、航空便での輸入ができず、その部品を使用する国内二工場のライン停止が決まったという。部品は、タイヤの空気圧センサーのようだ。

おそらく現場では寝る時間もなく、社員たちが対策に追われていることだろう。この事件はリスク管理の大切さをあらためて浮き彫りにしただけではなく、そのリスク管理の対象が日本だけではなく世界中に広がっているということを示している。

しかし、次の二点を指摘しておきたい。

1.サプライヤー供給リスクの誤謬性

2.バイヤー企業のリスク体制の未整備

自動車メーカーを中心として、ラインが止まってしまったら莫大な機会損失を生じてしまうメーカーが、サプライヤーに対するリスク管理を徹底してきた。サプライヤー(部品メーカー)は、火災などの災害時であっても、絶えることなく自動車メーカーに部品を供給し続けることを要請されてきた。また、災害時に備えて、自動車メーカーも一体となった対策が講じられてきた。

しかし、対策とは「すでに起こってしまった災害」に講じられるのがほとんどである。起きてもいない事象に対して、対策を打てる企業はほとんどない。もちろん、次回はアイスランドで火山噴火が起きても、部品供給はストップしないかもしれないが、他の地域であればまた止まってしまう可能性はある。リスク管理とは、常に完璧なものではなく、どこまでも不十分なものであるという認識がなければならない。その認識の上で、「どこまで完璧にするか」を考慮するのだ。

さて、より重要なのは2.のほうである。これは日産自動車に限らず、ほぼすべての最終バイヤー企業において、その企業自体のリスク管理がなされていなかった。つまり、日産自動車はサプライヤーに対してはリスク管理を要請することはできるが、日産自動車自体の工場が災害に見舞われた際に、即生産を完全代替できる工場は持ち合わせていない。これは批判ではない。物理的にそのような工場を予め持っておくことはできないのである。たとえば、三河にあるトヨタの工場が突然大地震に見舞われ崩壊してしまったら、私たちはなすすべもないのである。

アイスランド火山噴火による供給ストップは、サプライヤーの供給リスク管理の大切さだけを物語っていない。バイヤー企業が樹立したくてもできない、自社リスク体制の未完備をも予見させるのである。

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