今夏、コスト削減への取り組み(牧野直哉)

今夏、コスト削減への取り組み(牧野直哉)

今年の夏は暑いでしょうか。桜が満開の中でそんな思いを馳せています。

このページによると、私が住んでいる関東・甲信越地域で、6~8月に平年よりも気温が高い確率は、50%となっています。二日に1日平年より高いのでしょうか。いずれにしても、今年も暑い夏が予想されています。

そして、今年はもっと別の要因で暑さを感じることでしょう。現在ネット上で公開されている電力需給緊急対策本部の資料(4月8日分)を参照してみます。今年の夏は、大口需要家で25%の削減。個人でも、15~20%の電力使用量を削減しなければなりません。この施策は、計画停電を行なわない為に実施されます。これまで実施された計画停電は、平等を求めたが故でしょうか、毎日実施時間が異なっていました。製造業にとって、計画停電を前提としない施策は大歓迎です(製造業以外にもそうですね)。しかし、そのために大口需要家で25%もの使用電力量を削減する必要があるわけです。

一方、今回の施策には既にNO!の声が挙がっています。このページの資料によると、計画停電の実施は免れないとあります。確かに主張の内容には一理あります。4月8日の資料では、最大ピークの電力量を5,500万kwと想定しています。昨年のピークが約6,000万kwであるにも関わらず、です。

一番恐ろしい事態は、現在電力需給緊急対策本部から提示されている案をベースに、夏場へ向けて節電対策を実施する。そして実際に夏場を迎え、需給バランスが逼迫して計画停電が急遽(想定外に)実施されることです。では、どうするか。簡単ですよね。6,000万kwの需要に対して、供給能力は4,500万kwなので、電気を使用する人がすべて25%削減すれば良いわけです。大口需要家も、個人もすべてです。問題はどのように電力を節約するかです。

例えば、夏にもっとも電力を消費する製品は、なんといってもエアコンでしょう。電機メーカーは、過去の製品の説明書や仕様をホームページで公開しています。私が自宅で使用しているエアコンは2003年製です。冷房能力が同じである2011年製と「期間消費電力量」を比較してみます。

2003年製 1,477kwh

2011年製 1,382kwh

となっており、6.5%ほど節電が期待できます。もっと大幅に消費電力が下がっていれば買い換えようか……とも考えました。しかし、これはピーク時間に使用する際に、設定温度を上げるか、そもそも使うのを止めたほうがよさそうです。

そして昨年の夏を思い起こしてみます。熱中症の問題が大きくクローズアップされましたね。このページによれば、大都市における昨年の熱中症患者の数は、一昨年との比較で大きく増加しています。(2,468人→13,017人、5.27倍)。熱中症の問題は、暑さと密接に関係しています。しかし、この電力不足問題により、熱中症の患者が増えるなんて事態は避けねばなりません。一方で、使用する電気も減らさなければならない……悩ましいですね。この問題は、命に関わる問題です。安易に一律で削減を求めるようなことがあってはなりません。そして、こういった事情を踏まえると、25%以上の削減が必ず必要であること、そして電力需給緊急対策本部の見通しにも疑問を感じます。そして、より一層会社で、そして自宅における節電の必要性が感じるわけです。

そして、常に稼働しているもの……そう冷蔵庫です。

冷蔵庫については、カタログに表記される消費電力量の基準が変更されています。なので、どの程度省エネになっているのかをエアコンのように掌握することはできませんでした。しかし、こんなページを見つけました。2008年製冷蔵庫と、2001年製以前の冷蔵庫との比較で、使用電力量が推定で43%も削減!とあります。これは、2001年製以前の年代がまちまちですので、どの年代に対して最新のモデルという言い方は一概にはできません。しかし、古い冷蔵庫ほど効果があるといえます。

次にテレビです。一昨年から始まった景気刺激策としてのエコポイント制度によって、大きな画面のテレビを購入されたご家庭も多いのではないでしょうか。このページには、ブラウン管テレビに対してのプラズマ及び液晶タイプの電気代の目安があります。ブラウン管テレビに対して、液晶は電気代が減るんですね。大画面テレビの価格が安くなった!といっても、まだまだ高い買い物であることに変わりありません。これも、エアコン同様に見る時間を25%削減すれば良いのです。ながらテレビなんてことは、一番慎まなければならないかもしれないですね。せっかくなので、テレビを消して、いろいろな本を読んでみても良いですね。

そして、オフィスを照らす「明かり」です。白熱電灯よりも蛍光灯、そして現在はLEDがもっとも省エネといわれています。従来電球及び蛍光灯を使用していたのをLEDに変更するわけです。問題は価格です。電球タイプで、安価になったといっても電球型蛍光灯の3倍程度です。ただ、消費電力の削減量は大きいですよね。私は、これを機に自宅のすべての蛍光灯をLED化しようと考えています。実際に新たに購入しなければならないLED電球の合計金額はバカにならないんです。でも、自分の判断で、自分で実行できることなので、是非やってみようと思っています。

また「明かり」に関して。特にオフィスでは、フロア全体を照らすのでなく、机上スタンドを採用してはどうかと考えています。夏場のピーク時には、まぶしいほどの太陽の光が降り注いでいるわけですよね。無窓工場とか無窓オフィスでなければ、全体の明かりは太陽と割り切ります。その上で、机上スタンドを各机に配備する。当然、現在の蛍光灯使用時との費用対効果を確認する必要がありますね。また、オフィスが暗くなることで、気分も暗くなる、そんな心理面での影響もあるかもしれません。しかし、今我々が直面している問題は、商用電源のベースロードとなる原子力発電所が使用できないという極めて深刻な問題です。暗くなることでの心理的な影響は、それこそ従業員が一つになって乗り越えなければならないと考えています。

さて、皆さんのお勤め先で、電気の購入はどのセクションが担当されていますか。日本企業の場合は、調達先の選択肢が少ないというか、ほぼ無く唯一ですので、総務であったり、メーカーであれば生産部門であったりするケースが多いようです。こんな状態は実はグローバルで見ると非常識です。私の勤務先の海外拠点では、電力は調達部門が購入しています。エネルギーマネジメントサービス会社と契約して、成功報酬型で節電対策をおこなってもいます。

電気はスイッチを入れれば使用可能なものです。加えて日本の場合、極めて高い安定性を兼ね備えていました。しかし今年の夏はそういかなくなる見通しです。安定の前に電気の供給が滞るかもしれない。でも、電気代も立派な費用なので、調達部門的視点でいろいろ行えることがあるはずです。皆がそうやって、今年の夏の電力危機を乗り越えたいと思っています。

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