失言は計画的に(2)

失言は計画的に(2)

一つ目。「このメーカーしか作れない」という状況のとき、果たしてバイヤー主導の価格交渉などあるのだろうか。

私は購買業を始めたとき、先輩に単純な疑問をぶつけてみた。「あのー。そこしか作れなかったら、そこが価格を下げる理由なんてないですよね」と。

すると、先輩は「そこをなんとか下げるように考えるんだよ」とだけ呆れて言った。

正直言って、今の購買部には「つきあい」で下げさせる、ということ以外に明確な理屈など見つからない。

これなら、当初の契約のときに「毎期何%ずつ下げること」という内容を明示化した方がずっとマシである。

二つ目。購買組織はそもそも前値ベースでしか査定ができないのではないか。

元々安い100円であっても、下げた率しか評価軸として持ち得ない購買部は、たった1%しか下がらなければ高評価を与えることができない。バカげたことだ。元々高い200円が5%下げたらそっちが高評価になってしまう。

だから、バイヤーになったばかりの私が「それなら最初は思い切り高い価格で契約した方がいいですね」と皮肉を先輩にぶつけたときに、「そうだな、そうしろ」と言われ呆れた記憶を思い出さずにはおられないのだ。

これなら、前値ベースの評価を全て止め、初回の決定単価のみを評価したほうがずっといい。

三つ目。バイヤーに実は発注先決定権限などないのではないか。

実際に、毎期の原価低減実績が悪いからといって、次期以降の発注量を激減させたというバイヤーがどれほどいるのだろうか。

いや、もちろんいるだろう。

しかし、それが本当に「そこしかできない製品を持っているサプライヤー」だとするとその答えは変化せざるを得ない。

結局のところ、バイヤーは現在の調達構造を大幅にいじらない程度に、ちょっとだけ表層で遊戯をして、それでおしまい、となる。

挙句の果てには「ここから買うしかないんだよな」とグチを言い合ったりする。

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「自由競争による価格低減」という思想が実は虚構ではないか、ということにも触れておこう。

多くのバイヤーが教科書的な言説--すなわち「競合で○○%の削減を目指せ」という言説--を聞いたとき、ウンザリしてしまう。

確かに、教科書的にはそうだ。実例もたくさんあるだろう。

しかし、目の前を見てみれば、「そこにしか発注できない」という事例であふれている。

「○○社では、○○を使用して大幅コストダウンを実現した」という内容を聞かされても、それがほとんど一般事務用品だったりするから、バイヤーは自分の業務には当てはまらないと思ってしまう。

無理もないことだ。

私の少ない経験でも、「大幅コストダウンが実現!」と叫ばれる事例はほとんどが「どこでもできる製品」であり「ただ誰も手をつけていなかった」領域のもので、それがカスタマイズされた製品であることはほとんどない。

調達コンサルタントも、「航空券や一般事務用品のコストダウン」を売りにするのはもうやめないか。誰か「超カスタム品を3割下げます」と言ってくれないか。

私はそういう人がいれば協力したい。

そろそろ、正直に「そこにしか発注できない製品を持っているサプライヤーには値下げを断念しましょう」と言わないか。

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かなり挑発的に書いてきた。

人によっては、私が「バイヤーの業務を放棄せよ」と言っていると思われるだろう。

そうではない。

単なる競合で下げることができないと認識した後では、他にやることがある。

それは、特定メーカーとの関係向上であり、特定メーカーに肩入れした競争力の向上活動である。

アメリカの調査で、バイヤーに求められる能力が「単なるコストダウン」から「サプライヤーリレーションの向上」に移ってきたのは偶然ではない。

これからは、単に競合させコストを下げたり、机をたたいてロジック抜きに価格を下げる交渉をするのではなく、もっと戦略的な見識が求められているのだ。

「バイヤーは『競合、競合』と言うのをやめろ!」

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