安全なくしても、生産はあり

安全なくしても、生産はあり

世の中には2種類の人がいる。

「お金を奪う人」と「お金を奪われる人」だ。

これまで数知れぬ営業マンと出会ってきた。最高の売上を誇る人、ジリ貧に陥る人。その違いは何なのか。あらゆる「売るテクニック」を網羅し、その一つ一つに詳細な解説を付与し一冊の本にした。『営業と詐欺のあいだ』(幻冬舎)というタイトルである。「お金を奪う」テクニックを、買う(バイヤー)側から説明した、おそらく世界初の本だ。

さて、私は製造業のバイヤーとして、そのように売り手たちを日々眺めている。

最近、売り手たちのホームページを眺めていると、「環境」「安全」という言葉が目につく。世界的な潮流だろう。「環境」については別途述べるとして、「安全」という単語の濫費は、おそらく、安全な職場作りに注力していることが、ある種のイメージ向上につながると信じられているからだろう。

そして、そんなホームページには、こう書かれている。

「安全なくして、生産なし」

ただ、私が思うに、これほど誤解されている言葉はない。これは、「まずは生産現場の安全を考えなさい」という意味ではない。本当は、「お客に安全な製品を提供できなければ、生産する資格がない」という意味で解釈されるべきものである。

「環境」と「安全」を売りにしている企業は、確かにパブリック・イメージは向上するかもしれないが、お客から「結局のところ、それって、俺たちにはどんなメリットがあるの?」と訊かれれば、答えに窮してしまう。「安全なくして、生産なし」という言葉を、生産者側に立脚した戒めと思っていれば、「お客に安全な製品を提供できなければ、生産する資格がない」という定義は思いもつかない。

環境に優しい製造工程を目指すのは、称えられるべきだろう。でも、その目標に欠けているのは、環境じゃなく、お客への優しさだ。

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