感情購買学(1)

感情購買学(1)

  「こんなメーカー選んだ購買が悪いっ!」

品質不良会議のこと。

とあるチップ部品のせいで基板のマウントができなくなったことがあった。

基板工場には次から次に生産すべきオーダーが待ち構えている。

ただでさえ、忙しいときに不具合によるストップ。しかも、この部品は前期から購買が指定したサプライヤーの製品に置き換えていた。

「前の部品だったらこんなことはなかった」、そう品質管理責任者は言い放った。

「どうするか決めましょう」、そうバイヤーは提案した。

しかし、まずは責任を明確にしたい人たちであふれている場においては無力だった。

責任を明確にすることは必要ではあるが、責任を被った主体がそれ以降保守的にならざるをえないという実態もある。が、その場ではまず「責任を明確にするのが先だ」ということであった。

「そもそも何でこの部品を替える必要があったんだ」、品質担当者が問う。
「それはコストの問題で、購買さんが・・・」、と申し訳なさそうに設計者が答える。
「確かにそうです」、とバイヤーが認める。

が、である。そもそも最初は皆で評価しあったのだ。

だから、こちらだって言いたいことはある。

バイヤーが「しかしですね」と言いかけたときに、品質責任者がこう断じた。

「結局は購買責任なんだよ。こういうメーカーを選んだ購買が悪いっ!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

今日も、これと似た光景がどれほど日本中で繰り広げられているだろうか。

繰り返し、購買へ責任を転嫁する組織体質はバイヤーを保守的(ドラスティックなコスト低減のアイディアを実行しない)にさせる結果に終わるのだが、それはそれで購買発で地道な改善活動を続けていくほかあるまい。

実は、私がこのエピソードで言いたいのは違うことである。

むしろ、自分への反省である。

それは、単なる反省ではなく、失敗から気づいたことがあるので述べておきたいことでもある。

そのことを述べる前に、突然だが、クイズがある。極端な仮定だが、問題を明らかにするためにお許しいただきたい。下記問題に即答してほしい。

『問い:あなたは電気メーカーに属しており、機器の購買担当者である。AとBのどちらかの製品を購入したい。どちらを選択するか』

製品A 「製品費として300万円の原価低減が可能である。しかし、長期的に見ると20%の確率で故障する危険性があり、その場合は900万円もの社内復旧費がかかる」

製品B 「確率2/3で問題なく稼動できる、しかも400万円の原価低減が可能である」

どっちを選択するか。

考えてみてほしい。

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