新入社員の受け入れ方

新入社員の受け入れ方

今年は桜の花の開花宣言と共に新入社員がやってきます。みなさんの勤務先
でも彼らの受け入れ体制づくりに頭を悩ませているのではありませんか。私
の勤務先でも毎回、少しずつ良くはなってきてます。今回はこんな話をしま
した。

「最初はじっくりと基礎をたたき込みたいんです」

新入社員を迎える部門のマネージャーのコメント。その考えには大賛成。し
かし基礎とはなんでしょう、それが問題です。

「ファシリテーションは体験抜きでは教えられません。ですから後でしっか
りと教えます。まずはその前に基礎となるロジカルシンキングと経営のフレ
ームワークをたたき込みたいと思います」

同僚のマネージャーは熱く語ります。フレームワークとはなんですか?と質
問すると、こう答えてもらいました。

「サプライヤーマネジメントやバリュー・チェーン、交渉論、品質マネジメ
ントや、生産管理の基礎ですかね」

確かに必須の知識ですね。さらに続きます。

「集合研修だけでなく読書レポートや自主勉強もさせた上で筆記試験をやり
ます。とにかくここでみっちり基本を教えた上で、実務に入る。そうでなけ
れば彼らはお客様の悩みに何ひとつ答えられません」

その同僚はますます語気を強くし言います。その通り、確かに。異議はあり
ません。

「では、こちらの案で進めましょうか」

私は少し考えてからこう答えました。

「なんか、ちょっとしっくりきませんね」

呆気にとられた表情の同僚。ちょっと意地悪だったかもしれません。私は彼
に質問をします。

「半年後の新入社員の姿をどうイメージしてますか?例えば直接材購買に配
属されたバイヤー。もしくは購買管理に配属されたアナリスト?」

同僚が考えている様子がわかります。

「サプライヤーに行ってどんな話をしている姿を思い浮びますか? 営業マ
ンや関連部署の話を聞く。その時新入社員にどう対応してもらおうって想像
しています?」

うっ…。瞬間詰まった後、同僚はこう切り返す。

「たとえば、サプライヤーとの間に起こった問題に解決の方向性を示せるよ
うになっていてほしいと思います」

私はその答えにさらに突っ込んだ。

「サプライヤーマネジメントや交渉論、品質マネジメントや生産管理の理論
で、いきなり営業マンと自社の代表として話をさせるのですか?こうあるべ
きですという教科書的な理想論って感じで?」

同僚は無言になりました。

「年齢23、24歳の社会人歴半年の若造が、社会人歴20~30年のしかも地獄や
修羅場を何度もくぐり抜けてきた営業マンに対して、座学で得られるような
理論でビジネスを語るのが我が社のバイヤーなの?」

私は続けます。

「新しく覚えた経営用語は楽しいおもちゃみたいなものじゃないですか。嬉
しくておもちゃを使って遊びたくなってしまう。わかったような顔をして話
してしまいませんかね?」

同僚は黙って聞いています。

「そして、最後には得意満面でサプライヤーに偉そうに説教する。そして臆
面もなく我々の要求を突きつける。そんなとき、これまで作り上げた信頼関
係はどうなりますかね?」

もう誰も発言しません。

「もし私がサプライヤーの立場でそんな話を聞いたらおそらくこう感じます
よ。『ふざけるな。けつの青いガキに何がわかるっていうんだ』とね。私は
新入社員にそんな風になってほしくはないのです」

そして続けます。

「ただですね、座学で得る知識は将来、絶対に必要になるんです。問題はタ
イミング。そして順番。こんな西洋のことわざ、知ってます?喉の渇いてい
ない馬に無理矢理水を飲ませることはできない。本当に知識が必要になって
いない新入社員に、いくら知識を詰め込んでも頭には入らないのですよ。新
卒半年目の仕事は、サプライヤーにかわいがらることまでで十分なんじゃな
いかと思うのです。彼らが小理屈を学ぶのはその先でいい。サプライヤーが
自社にどれだけ重要なのか、そう切実に思ってからでいい。そうでなくては
ほんとうの理論は身につかないと思うのです」

4月に入社するとびきり鮮度のいいピカピカの新人たち。彼らが水をたっぷ
り吸い込むように、まずは喉をカラカラに乾かすことから始める。教えるの
はその先で良いのです。

部下育成をミッションとするリーダーの仕事は無理矢理水を飲ませることで
はありません。喉を渇かすことではないでしょうか。新入社員の受け入れ体
制を考えながら改めてそんなことを考えたのです。

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