物流の話をしよう 2(牧野直哉)

物流の話をしよう 2(牧野直哉)

早速ですが「物流」とはなんでしょう。毎度のことですが「物流」について定義付けをおこないます。

物流とは、文字通り「物の流れ」です。大辞泉では「生産者から消費者に至るまでの商品の流れ」とあります。この定義には皆さんも異論がないですね。表に出ていない部分が多いですが、我々の生活はこのあらゆる「物流」に支えられています。そして、この物流をコストミニマイズという観点で見るとき、一番重要なことは「運ばない・動かさない」ことです。たとえば、ある生産工程においてもIE(インダストリアルエンジニアリング)による効率化で、物を手にとる動きを最低限にする工程レイアウトを考えます。これも広義の物流改善といえます。今回のお話での「物流」とは、サプライヤーから自社へ購買した物を届けてもらうことだけではありません。バイヤーとして目にするありとあらゆる「運び」を対象にします。

しかし「全て」では、つかみ所がないですね。なので、2つの切り口から物流の世界へアプローチしたいと思います。

1. 機能別分類

物流の4つの「機能」に分類します。

(1) 梱包

(2) 荷役

(3) 輸送

(4) 保管

これに加えて、物流センターを含めた場合に「(5)流通加工」や「(6)情報システム管理」を含める場合もあります。高度化した物流を志向する場合、(5)や(6)は欠かせません。今回は調達・購買担当者という門外漢が物流を学ぶわけです。従いコアの機能であり、基本の4機能にフォーカスして考えることにします。

2. 分野別分類

これは、物流をそれぞれおこなわれるプロセスに分類しておこないます。

※物流センターを持たない場合は、自社内に生産・社内物流を含むこととします

物流とは、サプライチェーンにとって書くことのできない一要素であると同時に、非常に広範囲をカバーしています。それぞれの物流で、上記1にて述べた梱包、荷役、輸送、そして状況によっては保管が発生するわけです。各々の機能分類の課程でコストが発生していることはいうまでもありません。この多様に発生している物流を、効率的におこなうか否かで、トータルコストに大きな影響を与えることは、容易にご想像いただけますね。

次に、物流にともなって発生する費用の最小化へのアクションを考えます。まず、物流費用の性格について考えてみます。

比較的規模の大きな会社では、物流を掌る子会社を持っています。物流に必要なリソースを考えてみます。人的資源、フォークリフトやトラックといった輸送用機械、物流拠点や倉庫に必要な土地、設備まで含めると、物流とは固定費の塊であることがわかります。物流作業を子会社へゆだねることは、発生コストの変動費化といわれます。固定費としての負担を避けて、変動費化するのが子会社化の目的です。実際は子会社化しただけで変動費となって売上金額の上下に連動して物流費が発生するわけではありません。できるだけ効率化を目指した結果、一度に多くを輸送するために大型のトラックを導入したものの、売り上げの減少によって空きスペースがあっても大型のトラックを走らせる例などがその典型です。子会社化が進んでいるということは、固定費化を嫌う企業が多いこと、そして物流とは固定費であるとの企業意識の表れといえます。

またもう一つ、物流費には「時間との闘い」が存在します。わかりやすい例として、航空券の価格で説明しましょう。皆さん、東京~福岡を飛行機で移動する場合のコスト、上限と下限をご存じですか。

2010年9月5日現在、普通運賃は¥36,870.-とあります(ANAの場合)。同じページにプレミアムシートを含めれば8種類の金額が提示されています。普通席で7種類です。上限は先ほど提示した金額で、下限は株主優待割引の¥18,520.-になります。差額は¥18,350.-にもなります。普通運賃の約半分ですね。この価格の差はなぜ生まれるのでしょう。

特別な条件設定によって安くなっている場合もあります。9月6日のチケットを購入する場合、株主優待や介護割引を使用しない場合の最安値は特割の¥25,700.-です。この価格でも普通運賃との差額は一万円にもなります。この差額が生まれる理由は、チケットの持つ柔軟性です。

特割で購入したチケットは、変更ができません。ところが、普通運賃で購入したチケットは、変更可能です。国内線ではあまり意識しないかもしれませんね。私は海外出張の際、毎回復路変更可能か否かで迷います。数万円の違いが生まれるためです。少しでも安価にゆきたい反面、復路まで確定だと不即の事態への対応ができません。

物流に話をもどしましょう。物流で発生するコストには「時間との闘い」が存在するとしました。これは、実際に物流がおこなわれるであろう時間を基点として考えます。事前に、あらかじめ予約を受ければ、輸送会社にとって、最悪荷物がなくて輸送に必要なリソースが遊ぶ可能性が低くなります。「運ばない」とのリスクを回避するために、安価な価格を提供するわけです。お盆や年末年始に、公共交通機関の料金設定が高額になるのは、満員になることがあらかじめ予想されるためです。逆に、その時期に移動したい人が多いので、あらかじめ安価にチケットを販売する必要がない。これと同じロジックが物流にも起こります。急に物を運んだり、逆に運ぶのを直前になってやめたりすることは、コスト的には悪化方向となるわけです。

●本日のポイント

1. 物流によって発生するコストは固定費的性格を持つ

2. 物流で発生するコストには「時間との闘い」が存在する

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