経済学の呪縛

経済学の呪縛

先日報道されたホンダに続いて、台湾の大手電子部品メーカー鴻海精密工業も従業員に対して賃上げを実施するという。試験等に通る必要はあるようだが、一か月あたり300ドル弱の賃上げになるようだ。

ホンダの場合は自社工場の賃上げだった。この鴻海精密工業はアップルなどの委託先であり、「アップルの委託工場が賃上げ容認」という形で報じられた。アップルが全面に出ていたが、これはアップルの工場ではないため、ホンダの例とこのアップルの例は異なる。

また、もちろん、組立時間削減やその他の生産技術進化もあるため、この賃上げがダイレクトに製品コスト上昇を招くとは断言し難い。それに、適切な水準であれば、この賃上げはむしろ歓迎すべきことかもしれない。

しかし、である。

やはりいくつかの報道を聞いて感じるのは、「経済学の呪縛からは逃れられないのか」ということだった。これまで中国万能論者は、中国には無数の労働者がいるので賃上げは起こらないだとか、上方硬直性があるとか、そのようなことをあげていた。

ただやはり、中国市場の労働価値が上がっていけば、当然ながら労働賃金もあがっていくことになる。中国が提供する製品レベルが上がり続けると、それは中国人労働者の賃金があがることを意味する。国際経済学が証明した理論そのままだ。

各社はポスト中国を目論み、次なる労働力の確保を狙っている。それはインドだ、という企業もある。やや遅れた感はあるものの、ベトナムだ、という企業もある。そして、インドもベトナムも、賃上げが起こったあとに、さらに次の市場に移っていくだろう。

経済とは静的なものではない。きわめて動的なものだということを、中国人労働者の賃上げ問題があらためて教えてくれる。

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