若造ではどうにもならないことへの反逆 ~ 不毛な交渉を超えて(2)

若造ではどうにもならないことへの反逆 ~ 不毛な交渉を超えて(2)

社内取引に関しても同様に考えてみようか。

社内で製造している品物があるとする。そして、その品物を別の部署が買うとする。

あなたは、その別の部署からの取引の交渉をせねばならない。

常識的なあなたなら思っているはずだ。社内間の取引とはなぜああも不毛なのだろうか、と。こっちが損すれば、こっちは得する。

結局、会社全体から見れば同じような話になぜにあれほどの時間を掛けなければいけないのだろうか。

しかも価格決定においては厳密な計算による原価計算でないものが多い。あちらの声が大きい、こっちの担当者が弱い、などなど社内ゆえに本質以外が問題になってしまうことがおおいのだ。

一番困るのは、事業部同士の戦略や関係が曖昧のまま、担当者にだけは無理なコスト目標がおりてきたりする。

連結決算対象企業との交渉だって同じだ。

最悪なのは、連結決算対象企業で自社のOBが働いていたりするとき。こういうOBは勘違いしていることが多く、自分の元企業の担当者に対してぞんざいな話し方をすることもある。まさに上記の例がそうだ。

属した企業を愛する精神は理解できるが、あくまでも労働契約の下に成り立っていた関係を拡大解釈する人がいるから困る。

ではなぜ、社内であったり、連結対象の企業に対して価格交渉を実施するのだろうか。

その質問に対して今まで多くの諸先輩方に訊いたが、返信はおおむね次のようなものであった。

(1)コスト交渉を実施することによって、販売側にコスト意識が芽生える。そのコストになるように必死に構成部品単価を下げようとするだろうし、工程に工夫もするだろう。

(2)購入側がコストを抑えることによって、その完成品がより市場競争力をつけることができ、販売台数も増える。そうすればおのずと社内製品(連結対象企業)からの購入も増える。両部門(両社)ともハッピーになる。

しかし、これらの答えは本当であろうか。

(1)であれば、売価が安くなったからといってすぐに工程変更したり購入品一般が安くなったりして効果が出るわけではない。量にもよるので、もしその購入量がその部門(企業)の命運を左右するほどであれば長期的には関係するだろう。だが、少量であった場合はその購入量では影響を与えることはほとんどない。

(2)に関しては若干説得力がある。ただし、その社内からの購入品のコストダウンのみで本当に客先に魅力的な価格競争力をつけることができるかは不明だ。10円購入品が安くなり、最終材の価格も10円安くなったところで魅力アップするだろうか?

これに対してどう考えるべきだろうか。

答えに至る過程は後述するが、要点は次のようなことだ。

事業部(連結決算対象企業含む)間の交渉とは結局のところ、「どこを犠牲にしてどこを伸ばすか」という経営戦略に他ならない、ということだ。

それは、短期間では企業全体のプロフィットアンドロスの違いはないものの、中長期的に「どこの部門に資源を集中させるか。どこの部門にキャッシュを会社として集中させるか」という経営問題だということである。

例えば、三菱電機では、自社生産のFA機器に関しては、赤字の事業部に対してさえ高値で売りつづけキャッシュをFA機器事業に集中させた。現在では、多くの赤字事業が姥捨て山送りになっている一方、FA分野は同社の利益の大半を稼ぐまでに成長している。

これはバイヤーの交渉戦略ではなく、企業全体としての経営戦略なのだ。

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