調達・購買・資材の泣ける話②

調達・購買・資材の泣ける話②

あなたは、きっと大人の表情で「そうか。わかったよ、ありがとう」と言う
だけだろう。このように、自分から動こうとせず、創造性を自ら捨ててしま
い、倫理を持ち合わせず、やる気がなく、相手が気持ち良くなるように仕事
を引き受けることができない人たちがいるから、調達・購買部門の地位は低
いままなのではないだろうか。

自分のためにですら努力しようとしない人物が、まわりのため、会社のため
に行動を起こそうとするだろうか。こういう人たちに、仕事の尊さを理解さ
せることはできない。それができるとしたら、給料を下げるか、あるいは会
社の片隅に飛ばしてやることくらいだ。

最近は、雇用状態が不安定になっているから、多くのバイヤーが職場に不満
を抱えたままとどまっている。バイヤーの中途採用を募集しても、その多く
は日本語すらちゃんと使えず、礼儀もしっかりしておらず、しかもそれらが
なぜ大切かを考えてもいない、と私の知り合いの経営者はいう。

このような人たちを信じて、全権を託して、「緊急コスト改善プロジェクト」
の立ち上げを命じることなどできるだろうか。

「あのバイヤーのことなんですけどね」とある企業の調達部門の課長職の男
性が教えてくれた。「あいつねえ、仕事はちゃんとすることはするんだけれ
ど、出張に行かせたらダメだね。絶対にサプライヤーさんと飲みに行っては、
遅くまで女性の店に居座るんだよ」こんな男性に、部門の運命を任せること
ができるだろうか。

私は最近、「不況で、虐げられている従業員たち」に対する、同情をよく耳
にする。私はその同情に与しないわけではないが、すべての従業員たちが高
潔ではないのと同じように、すべての経営者たちが貪欲でもない、というく
らいの認識は持っている。経営者たちが、ロクな働きをしない社員たちに、
少しでも良い仕事をさせようと走り回っても、社員たちがその熱意を全く理
解せず、すべてが徒労に終わった例も知っている。そして彼らは髪の毛を白
くする代わりに、ほんのちょっとのお金と住むところ以外は何も残らない。

今はみなが必死である。ほぼすべての企業や部門のなかで、ちょっとしたム
ダを駆除しようと苦悶している。そして、もしかすると報われないかもしれ
ない努力が重ねられ続けている。そんな中にあっては、経営者たちは「ちゃ
んとした働きをしてくれるはずだった」バイヤーたちを解雇し、代わりの優
秀な人物を雇う、ということが起きても何ら不思議ではない。

会社経営とは、もちろん社員の幸福向上のためにあるものでもあるが、まず
は最大限の利益を捻出するために集中される。それは、「緊急コスト改善プ
ロジェクト」を、自信をもって引き受けてくれる勇気ある人物を探し続ける、
ということでもある。

人は自分自身を悲劇のヒーローにしがちだ。だから、バイヤーたちと話すと、
そこにはいつも悲哀が満ち溢れている。「課長がイヤな奴で!」「誰もおれ
の本当の実力が分からないんだ!」。そのようなバイヤーは、まず何よりも
「自分が他人に与えるところから始めなければいけない」という真実を知ら
ない。

だから他者から何かを受け取ることもできないだろう。もし彼らに「緊急コ
スト改善プロジェクト」をお願いしたら、きっとこう言うだろう。「忙しい
ので、他の人にお願いしてもらえませんか?」

私は、このように意欲がないバイヤーを、簡単に更生させることができない、
と経験から知っている。それに、むしろこのような人たちは憐みの対象かも
しれない。

しかし、である。彼らを憐れむ暇があるのであれば、別の人たちに対してそ
っと涙を拭いたい。つまり、崇高な目的のために就業時間やお金など関係な
くただひたすら努力しているバイヤーたち、そして今日も勝てない調達に挑
んでいる偉大な「どあほうたち」に、である。

私は言い過ぎだろうか。そうかもしれない。

ただ、私の関心の対象はいつも、無謀な仕事に熱意をもって取り組むバイヤ
ーだった。「緊急コスト改善プロジェクト」を命じられればそれを黙って快
諾する。無視しようとせず、やる前からあきらめもせず、自分の不遇を恨ん
でみることもない。

そんな人であれば、もし会社がなくなっても、どこでも働いて生きていける。

社会の進化とは、そのような高貴な生のあり方を探し続ける、終わりなき旅
のことである。

2001年に私が不意に聞いた物語。彼はその後、社内のすべての話題をさ
らった。彼はどこの調達部門でも、いや、どこの会社でも、どんなプロジェ
クトでも、どんな人間からも必要とされるのだろう。

誰もが、彼を呼んでいる。

彼のような人間は、多くのところで、本当にいたるところで、本気で、真剣
に、必要なのだ。

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私は「ほんとうの調達・購買・資材理論」を発信しているが、理論とはいえ、
結局のことろ一人の人間、一つの企業を突き動かすのは「情熱」「熱意」と
いう青臭い要因ではないか。

この昔話をどの程度の人たちが面白く思ってくれたかはわからない。ただ、
少しはいるのではないかと思う。感動してくれた人が。そしておそらく、そ
んな人たちからほんとうの調達・購買・資材改革ははじまる。

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