購買部の品格(2)

購買部の品格(2)

私はそのときヤバい、と感じていた。

なぜだかよく分からないが、自分というものがありながら自分の上に問い合わせが行くということに、恥かしさや無念さやら様々な感情がゴッチャになって駆け巡っていた。

私はそこから「自分の存在意義」というものを意識しだした。言葉で書くと莫迦(ばか)みたいである。でも、よいチャンスだった。

その頃からだろうか。

こういう言葉が非常に気になりだした。

「下が育たないんだよね。サプライヤーさんとの交渉も最後は私がやっちゃうし、他部門との調整も・・・」

「下が育たないんだよね」とボヤいている。が、ボヤいているにも関わらず、あの満足感に包まれた顔はなんだろうか?

他企業の購買のマネージャーと話したときも、購買ネットワーク会でも同じような発言を聞いた。

こういうことではないかと思った。

そのボヤきの原因はもちろん「下の人に任せないから」だ。でも、問題は簡単ではないのではないか。なぜなら人は「代替性のなさ」が生きがいの本質だからである。

ただでさえバイヤーは「俺なんていなくたって」と自嘲気味になりがちだ。

「あの人ではなく自分にしかできないこと」。これだけを求めてさまよっているようなものだから、簡単に「自分にしかできないこと」を捨てることはできない。そうではないか。

だから先輩バイヤーは「下が育たない」と言いながらも、満足しながらその「自分にしかできない交渉や他部門との調整」をやり続けるのである。

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ではどうしたらよいか?

簡単だ。自分に指名で仕事が舞い込むようにすればよいのだ。

法則が分かった。

現場にいる人しか知らない、貴重な情報がある。
優秀な人は偉くなる。
偉くなると現場に行けない。
だから、偉い人は貴重な情報を知らない。

これよりも普遍的なルールがあるだろうか?

会社のトップが「現場主義で行こう」というとき、それは「実際は現場主義ができていない」ということに他ならない。なぜなら、既に現場主義であれば改めて言う必要すらないからだ。

それは、「愛すべき国家」を論じるときと同じことだ。そういうことを論じなければならないとき、「愛すべき国家」など無いということだ。あれば、そもそも「そこにある」のであって、論じる必要すらない。

話を戻そう。

上司が自分の仕事を奪おうとしたら、自分しか知り得ない情報を出せばいいだけだ。担当の自分しか知らない情報。どんな小さなことでもいい。

営業マンのこと、生産現場のこと、新製品のこと、アロケーションのこと、日々向き合っているサプライヤーの情報を社内に発信する。

それも高速で。そして、「このことだったら自分に聞いてください」と言う(言うのだ。本当に言ってしまうのだ)。

私の場合、幸運にもこの策が成功し、他部門長まで私に問い合わせをしてくれるまでになった。

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最終的な判断が必要なときに、毎回上司に頼ってしまうバイヤーがいる。

自分で交渉できなかったときは上司に解決してもらって一丁あがり、としてしまうバイヤーがいる。

他部門から自分ではなく上司に相談が行くことを「仕事が減った」と安心してしまうバイヤーがいる。

バイヤーはこれらのことをずっとずっと恥かしいと思っていなくてはいけない。

現場の物事を一番知っている自分ではなく、他者を頼りにする部外者いることを、ずっとずっと恥かしく思っていなければいけない。

社内へのアピールについてはこれまで何回か書いてきたので省略する。

重要なのは、学ぶことだ。そして、自分しか発見できない「何か」を育てることだ。社内に発信することだ。自分で決断することだ。自分で責任をもってやり遂げるということだ。

バイヤーにとって重要なのは、スキルや知識ではなく、上司や他者(他部門)への依存を止めることではないかと思う。

一人一人が、真剣になって自分だけの「購買」を考えたときに、何かが変わる。

いや、変えよう。今すぐに。

「バイヤーは『そんなことも知らないんですか?』と上司に言え!!」

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