購買2.0の本質(3)

購買2.0の本質(3)

「コストテーブル的にはどうなんだ!!」

あるコスト報告会のときのことだった。

購買部内で、次の新機種の購入品に関する報告が各バイヤーからなされていた。

時は2001年。半導体ショックと呼ばれ、どこの企業も半導体の入手に困っていたときだった。

そのときに、DRAMのコストを報告したバイヤーがいた。

確かに、どう考えてもそのDRAMは高い。

購入先は韓国のとある有名メーカーからだった。

なぜ、たった小容量のものがそんなに高いのか。誰が見ても、通常価格の1.5倍ほどはあるものだった。

そのDRAMを確保しなければ生産ラインは止まる。しかも、他に売ってくれるところもありそうにない。

そういう要因で、バイヤーは「こういう製品は市場が価格を決定するものだ。だから、その時々によって価格が高くなるのは仕方がない」と思っていた。

しかし、思ってはいるものの、高いコストで購入せざるを得ないという不甲斐なさは確かに感じていた。でも、だからといってどうする?その答えも持ち合わせていなかった。

当然、報告会の中では叱責されることになった。

だが、そのバイヤーが思っていた指摘と違った。上司たちは口を揃えてこういうのだった。

「そんなに高いなんて、コストテーブル的にはどうなんだよ!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

2001年当時に半導体の購買担当をしていた人であれば分かってもらえるだろう。

携帯電話需要があまりに急増し、ブツを揃えるだけで皆が必死だった日々。

現在の材料高騰にもつながるところがあるが、バイヤーはコストを抑えることだけでも精一杯で、ある物は値上げを認め納入を確保するだけでも必死だった。

しかも、私が購入しようとしていたものは、通常の1.5倍だったとはいえ、市場価格からすると高いわけではなかった。

もちろん安いともいえないが、納入品確保の観点から言えば、どちらを優先するべきかは言うまでもなかった。

しかし、言われたのは「コストが高いのは許さん。それはコストテーブル的に言って妥当性があるのか」ということだった。

もちろん、そのときに何Mがいくらというコストテーブルならあった。

だが、それを使ってサプライヤーと交渉して一体どんな意味があるのか。

市場で決定されるべき製品は、逆に値下がりしているときはその市場価格を盾にとって値下げ交渉を実施するだろう。

だから、この瞬間は市場原則にのっとって、しかし過剰には値上げさせず、納入品を確保することが最重要だと判断した。

私はその席上の場では、必死に必死に「コストテーブルなど使っても意味がない」ということを力説した。そして、このコスト高に至るまでに誰よりも苦労したことを。他の誰もこのコスト以下では買えないことを。あくまで定量的に。

すると、上司は渋々ながら納得していった。

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