逃げろや逃げろ、中国から(坂口孝則)

逃げろや逃げろ、中国から(坂口孝則)

・中国からの逃走

世の中にはカンタンなルールがある。誰もが同じ方向に走りだしたとき、それは逃げるときだ。誰もが逃げ出したとき、それは近寄るときだ。株の売買を考えてみればいい。みんなが一斉に買いに走るときは、バブルが崩壊する兆しだ。みんなが株を売りに出したときは、それが買い時だ。

アメリカでかつて起きた市場の大暴落(ブラックマンデー)の数日前、某資産家は、ゴルフ場に行き、アルバイトのキャディーから株の売買を勧められた。資産家は「キャディーが株を語るようになったらおしまいだ」と、次の日に株式を売却し、災難を逃れたという。逆もしかりだ。東京電力株であっても、どん底になったあとに、上振れし、それによって大儲けした人たちが出た。

あるアナリストは、「大手証券会社が、特定領域を推奨しだしたら、それからは身を引いたほうがいい」と皮肉った。たしかに、某証券会社は、かつて原油は1バレル200ドルまで上昇する、と煽り、個人投資家がそれにならい原油関連株や先物に手を出した。その後、原油は大暴落したものの、その大手証券会社だけは売り抜けたという。大勢を一つの方向に引っ張って、自分だけが違う方向に進む。これまた、前述のアナリストによると「高度な詐欺」だという。

この言説が必ずしも正しいとは思わない(だって、これが常に正しいとすれば証券会社は倒産しないはずだ)。ただ、一つの面白い見方ではある。「証券会社と逆に進め」「大衆と逆に進め」と。

この文脈でいうのだとすれば、2年前にBRICsがさかんに推奨された。とくに不動産価格は、経済成長とパラレルに、その上昇が見込まれるという。では、そこから2年、実態はどうなったのだろうか。

http://bit.ly/ubZV37

この手の記事は冷静に読む必要がある。ただ、それでもなお、「上海のマンションは約93平方メートルで33万5000ドル(約2600万円)。これは市民の平均年収の45倍にあたる」という記述に驚かざるをえない。2008年に起き、2009年に本格化したアメリカのリーマン・ショック時にも見られなかったほどの「バブル」ぶりだからだ。

当時のアメリカでは、年収4万ドルの家庭が50万ドルの家を購入しているとされた。そうすると、12倍程度だ。日本では、500万円の年収の人が3000万円の家を購入することは珍しくない。とすれば、6倍だ。しかも、中国の金利は高騰し、45倍というのはもっと膨らんでいく。これは、たしかに「バブル」といわれてもおかしくない状況だろう。中国政府がなぜ景気を急速に冷やそうとしているかもよく理解できる。

・中国経済の実態解明が望まれる

中国政府が2011年6月末に発表した資料によると、中国の企業数は1,191万社だそうだ。さらに、D&B社によると、このうち年間100万社ほどが倒産や廃業に追い込まれているという。十分の一とは、恐るべき数字だ。

中国の借入金利息は高いところで、月に15%だといわれる。年間で200%の利息とは想像すらできない。それに見あうリターンの商売など、ほとんどないだろう。借りては自転車操業に陥るだけだ。また、悪徳金融業者の跋扈が社会問題となり、前述の200%以上の業者すらいるという。

さらに面白いことに、中国政府の公式見解では、「赤字企業は8.3%」に過ぎず、「年率20%で成長している企業が三分の一程度」あり、「夜逃げする経営者も少ない」ことになっている。もちろん、私はメディア報道やD&B社が正しいとはいわない。ただ、そこに恐るべき径庭(乖離)がある。この事実だけは指摘しておきたいと思う。

こう見ると、中国には二つの経済事情がある

(1)景気過熱の行き過ぎによる金融引き締め
→マンションの価格と年収を見ても、景気がインフレ基調にあることがわかる
(2)金融引き締めによる利息の上昇
→その結果、市中にお金がまわらず、それでもお金を借りざるをえない経営者は闇金に手を出し、そのまま倒産する

経済学者の方々の数名と話しても、正直、中国の統計データをどこまで信じてよいかわからない。共産党政府の悪口を私はいいたくない(批判はあれど、中国は日本のパートナーだからだ)。しかし、経済実態を正確に示すデータの公開が求められる。

・中国の復活策は?

では、中国の復活策はあるのだろうか。私は、あまり中国の停滞(というものがあったとしても)をあまり心配していない。日本の高度成長期にも停滞はあった。中長期的に見れば、中国は復活し、ふたたび経済モンスターとして私たちの前に姿をあらわすだろう。

中国の復活策について、中国元の透明性や、市場の公平・公正性が語られている。私は中国の物流網の整備が中国経済復活に寄与するのではないかと思う。中国ビジネスをやっている人たちからは、常に「中国物流網の弱さ」を教えられる。せっかく強い経済基盤があったとしても、それを運ぶ物流網が脆ければ、経済はたちゆかない。

もちろん、かつてのように「中国からモノを運べば、必ず数が減っている」ことはないだろう。しかし、物流スピードや物流品質に懸念は残る。経済成長とは、速さのことである。通常であれば、1回の取引しかできないところを、2回の取引ができること。その速さ(スピード)こそが一国の経済を成長させる。

http://bit.ly/uqYSpw

先日、Googleがamazon.comに対抗する物流サービスを発表した。これは、全米を1~2で売り手と買い手を結ぶ、恐るべきサービス構想だ。これは、一国だけのサービスにとどまることなく、日本やアジア諸国にも展開される。広いアメリカで培ったノウハウを、中国全土に応用することが考えられるだろう。

隣の国である中国が停滞したときに、アメリカは物流網サービスを注入することによって、中国という国の復活を自ら支え、そして権利を得る。そのときに、世界最強といわれる日本の物流業者はどのように対応するだろうか。それとも、他国の優位を指をくわえて見ているだけだろうか。

各国は「中国のバブル崩壊」を予期しているだけではない。「中国のバブル崩壊後」を見据えた策を虎視眈々と狙っているのである。

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