過去との決別①

過去との決別①

めちゃくちゃ恥ずかしい思い出を公開したいと思っています。

1年ほど前のことです。パソコンのメールをチェックしていると、以前の職
場の関係者(かなりの年長者です)からのものがありました。

「覚えてるか?」

この文面からおわかりの通り、すごくイヤな感じというか、なれなれしいと
いうか、正直にいってあまりつきあいたくない人でした。私のメールアドレ
スは公開していますから調べようと思えば、調べることが可能です。私のこ
とが気になったのか、メールをくれたようでした。

「今度、そのへんにいくから会いましょう」とも書かれていました。

そこで、私はさらりとかわすようなメールを返信しておきました。しかし、
かなりしつこかったので、「まあ昔にお世話になったこともあった」と思い、
一度お会いすることにしました。

その人は、私と会うなり、いきなりこう切り出しました。
「なんか、調子にのっていろいろやってるらしいじゃん」
おいおい、と私は思いました。たまたま同じ職場で一緒に仕事をしただけの
関係にもかかわらず、尊大な発言は慎むべきだからです。
「テレビにも出てるって? へえ、お前はテレビに出るために会社を辞めた
のか」

この手の人間にはへりくだることが最も優れた解決策でしょうが、私は無言
のまま何も語りませんでした。

「いやだからさ、そんな顔するなよ。ちょっと言っただけだろ」
「ちょっと、って何をですか」
「だからちょっと、だよ」

さすがに私も興奮してしまっていたのか、私から会話を継ぐ気にはなれませ
んでした。何秒間か忘れましたが、永遠のような沈黙が続きました。

もちろん、ありふれた人なのかもしれません――。かつての同僚を茶化す人
であればきっとどこにでもいるのでしょう。以前の職場で見た私と、いまの
私にギャップを感じたかもしれません。あいつはたいしたことがなかった。
それなのにいま活躍しているということは単なる運か偶然か――。そう感じ
ていたとしてもおかしくありません。

どうも、彼は雑誌かテレビかラジオで、私が載っている(あるいは話してい
る)ものを見たようなのです。さらに、私の書籍がけっこう売れていること
に、驚いてしまったようでした。

そして、たまたま私が数百人規模の講演会で話したときの記事を読んだよう
でした。

「これがあいつか?」

たしかに、話している内容はかつて私が言っていたことと似ている。さらに、
メールマガジンを発行している。

でも、「聴衆を圧倒する、軽妙な話し口?」。彼は記事を読んで信じられな
かったのですね。

「お前、うまくやったな」と彼は言いました。「なんかコネがあったのか」。

そんなもんはあるはずはありません。コツコツと学び、コツコツとアウトプ
ットを重ね、成果を出し、それを次の仕事に結びつけるしかないからです。
魔法の杖なんてものは、探してもどこにもありません。

もう、私はイヤになりました。これは、コミュニケーションスキルでどうに
かなるとか、対話術とか、そんな種類の話ではないのです。その場に座って
いるのがイヤだったのです。ただ、できるだけ最低限の礼儀は尽くそうと考
えました。

「もう一時間は経ちましたし、こちらもそろそろ……」。私は時計を見まし
た。彼は不服そうな顔をするのです。きっと時間もありあまっていたのでし
ょう。
「なんだよ、忙しい先生だなあ」
さすがに私も言い返しました。
「先生と茶化されるほど落ちぶれていませんよ」
「先生、先生っていわれていい気になっているんじゃないか?」
「○○さん、あなたはふらっとやってきて、こちらを不快にして恥ずかしく
ないんですか」
沈黙が続きました。

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