#2 ビジネスマナー研修 1

#2 ビジネスマナー研修 1

「明日はビジネスマナーの研修があります。皆さん、名刺入れを忘れずにもってきてくださ~い」

前日の人事の担当者の注意事項を守って、アキは“ある人”から卒業祝いにもらった名刺入れを持ってきていた。本当はもっと明るい色がが好きだけど、仕事で使うにはこれくらいの色が良いのか?と思う落ち着いた色だ。学生時代にも、名刺を持っている人はいたが、アキは持ったことがなかった。名刺交換も初めての経験である。

「いいですか?名刺交換の時には、交換する相手に敬意を表して、丁寧に渡し、受け取ることを心がけましょう~」

丁寧に渡す?受け取るって??なんて思っていると、新人が一名指名され、実際に名刺交換をやって見せてくれた。指名されたのは・・・・・・確か、達也とかいったっけ?可もなく不可もない普通の男子に見えた。

達也も名刺交換は初めてだったらしく、はた目で見ていてもギコチなさ満点だった。何か、カクカクしている感じ。おもしろ~いと思っていると、思わず名刺入れを落とした達也にドッ!と会議室が沸き返った。達也は丁寧にしようと、名刺入れを持ちながらも、両手で相手の名刺を受けようとしていたのだ。そんな達也を見て、

「片手で受けると、何か丁寧じゃない気がするしな~」

と、半ば達也を庇いたくもなるアキだった。そんなアキの想いを見透かすように、講師の解説が入った。

「丁寧にすると言っても、片手に名入れを持ちながら、両手で名刺を受け取るのは、難しいですよね?なので、こういう場合には・・・・・・」

なるほど!名刺入れの上に置いて貰えば、何か丁寧っぽい。そう思うアキだった。

「一方的に名刺を受け取る場面では、両手を出して受け取りましょう。実際に片手で受け取って見ると・・・・・・随分横柄な感じがしませんか?慣れてくると、思わず片手でってならないように、初めが肝心ですから、こういった基本は、体に覚えさせましょう。これから各部署に配属されると、今日の研修太郎なんて、研修用の名刺ではなくて、皆さんの名前が入った名刺が準備されています。そして最初に名刺を出す相手は、友人だったり、両親だったりするかもしれません。そんな時でも“私はこういうものです、どうかよろしく御願いします”という気持ちを忘れずに、心の中でつぶやきながら、両手を添えて渡してみましょう。きっと、皆さんが一人前の社会人に近づいたことを周囲にいる人が感じてくれるはずです!」

今まで名刺を持ったことのないアキは、配属されて名刺をもらう日が、少し楽しみになった。最初は誰に名刺を渡すんだろう・・・・・・?そんなことに想いを巡らすアキだった。

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