#4配属希望面接

#4配属希望面接

「……我々の仕事の話は以上です」

拍手と共に、ちょっとしたざわめきが起こる。皆がこれから待ちかまえている難関で、何かを話さずにはいられない感じだ。アキも何か落ち着かずに、これまで各セクションの部長が説明してくれた、仕事の概要について、自分のメモを見直していた。でも心はかなりうわの空・・・・・・いったいどのセクションが良いのか?さっぱりわからないのだ。やりがいのある仕事はしたい・・・・・・でも、忙しすぎるのはイヤだ・・・・・・やりがいと忙しさって正比例?反比例?ともかく各部長の話の内容を一生懸命にメモにとったが、どんな言葉もアキの決断を促す内容はなかった。考えてもしょうがないか・・・・・・とノートをとじた瞬間、隣の席に座った「フツーの男子」という言葉以外に形容詞が見つからないトオルから話しかけられた。

「アキはさ、どこを希望するか決めた?」

「いやぁ・・・・・・そう簡単には決まらないよ。最初は技術系の人から面接でしょ?ってことは、あと一時間くらいはあるわけだから、一生懸命考える。」

「考えてさぁ~答えが出るかなぁ~だって、最後のセクションの話を聞いたのは今さっきだよ。ちゃんと内容を理解するのも大変だし、初めの方に説明して貰った内容なんて忘れちゃったしなぁ~」

外見もフツーだから、気の利いた言葉を期待しても無理か・・・・・・そんなことを思って思わずため息をつくと、

「アキちゃんも元気だしなよ、今回配属になったところで一生を過ごすわけじゃ無いんだから。でもなぁ~第一印象で決めましたってわけにも行かないしな~」

思わず励まされたと思いきや、最後はぼやきで終わった。何の解決もせず、ただ時が過ぎていった。これから始まるは配属面接は、3名の集団面接だ。なので意外に進みが早く、アキの順番もあっという間に回ってきそうだった。私は何がしたいんだろう?どこで働きたいのか?そんな自分への問いかけが、少しの時間で解決するはずもない。自分の事に結論を出したりするのが人間として一番大変だな~とそんなことを思っていた。

面接は隣の会議室で行われていた。今や控え室と貸している研修室には、人事部門の若手が一人残っていた。名前は戸塚といった。せっかくなので話しかけてみることにした。

「戸塚さん、ちょっと良いですか?」

「何?どうしたの?」

「戸塚さんの時も、同じような感じで配属希望を聞いて貰ったんですか?」

「うん、同じ。場所もやり方もまったく一緒。今からちょうど二年前だね」

「その時は、具体的に希望とかって言ったんですか?」

「言ったよ、一応」

「人事が希望だったんですか?」

「まさかぁ~、俺はどっちかって言えば、外との繋がりがあるセクションが良かったよ。営業とかね・・・・・・あと、購買とか」

「じゃぁ、なんで人事に?」

「さぁ~なんでだろうね?こっちが聞きたいくらい。卒論でHR関連のテーマを扱ったって言ったのが原因かも。配属先の決定なんて、意外といい加減みたいだから。結構自分が口にしたことが、配属先に影響することもあるみたいよ。俺の同期だって、ゼミのテーマが、簿記とか原価計算って言った人間が、経理に配属されているしね」

「そうなんですか~ 自分で口にした事ですね・・・・・・」

「でも、事務屋の仕事って、どこのセクションでもあまり変わらないかなぁ~って思うよ。それに事務系は、最初に配属されたセクションから、最低一回は変わらないといけないからね。」

「そうですね~」

アキの悩みは、解決するどころか深まっていった。自分の言ったことが配属先へ影響する?だったら、希望を言うべきだとは思うけど、でもどこが良いのか・・・・・・モヤモヤした感じが頭に中に充満している。う~んどうしよう……

「そのままで、聞かれたことに、思ったことを答えた方が良いよ。この段階ではっきり自分の希望配属先を言えるなんて、俺からすれば逆に気持ち悪いっていうか、信じられない部分もあるし。技術系の場合は、例えば機械を専攻していたら、それが自分の得意分野で、当然機械関連の設計とかを希望するケースはあるけどね。事務屋の場合は、そこまで強い希望は持てない方が、俺は普通だと思うよ。もう一回チャンスがあると思って、今回は配属された部門で、会社のイロハを学ぶってスタンスの方が、俺は好感が持てると思うけど」

晴れないアキの顔を見た戸塚は、一生懸命に答えてくれた。2年間会社で働いてきただけのことはあるなぁ~と戸塚に尊敬の念を持たずにはいられなかった。

「いろいろ考えても、自分の意志が通る訳じゃないしね」

その通り。アキは自分に正直に行こうと思った。モヤモヤしているんだったら、それを正直に言おうと思った。そういえば、シュウカツで悩んだときも最後は「自分に正直に」だったっけ・・・・・・そんなことを思い出すアキだった。

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