シングルソースなサプライヤーを見つける方法(牧野直哉)

シングルソースなサプライヤーを見つける方法(牧野直哉)

少し前に、サプライヤーマネジメントで、代替サプライヤーについて言及しました。そして、さっそく、どうやったら代替ソースの有無を見いだせるのかとのご質問を頂きました。ありがとうございます。こちらも早速ご回答します。

「区別」するサプライヤーの一つとして、代替ソースのない=シングルソースのサプライヤーを設定しました。そして正直、困りました。というのも、私はシングルソースのサプライヤーを見つけようと思ったことはないのです。別の活動の副産物として、シングルソースであることを見いだしているに過ぎないのです。

「ほんとうの調達・購買・資材理論」の中でも述べましたが、よほどの物で無い限り、シングルソースということはあり得ないというのが私の基本的なスタンスです。したがい、1社購買状態であったなら、代替サプライヤーを探します。これは必ずやります。取りかかって見つけられなかったら、少し間を置いて、継続的におこないます。私が探しているサプライヤーには、もう4年も探し続けているものもあります。探し続けているけど、見つけられない状態=代替ソースがないからシングルソースと苦々しく認めるわけです。

苦々しくシングルソースであることを認めた場合は、代替ソースの探索と同時並行でやることがあります。それは、シングルソースのサプライヤーとの強固な関係性作りです。バイヤーに「買わなくて済ませる」といった、節約術のような考え方はできません。できるだけ当方に有利な条件を引き出すために、無理無駄を排除するために、綿密な打ち合わせを実施するためにも、良好で密接な関係を築きます。いつの日か、別のサプライヤーをぶつけて慌てさせてやる、と心に秘めます。もちろん、そんなことは顔には出しません。そして、ここで一つ質問です。なぜ、シングルソース/1社購買は問題なのでしょうか。

1社からしか購入できない場合、次のような問題の発生が想定できます。

・競合ができないため、価格が下がらない

・取引条件において、発注側の都合よりもサプライヤーの都合が優先される

これら問題を1フレーズで表現すれば「バイヤーの言うことを聞かない」ではないでしょうか。一言では「横柄」ですね。しかし、ここで私は考えます。コストを下げる手段は「競合」だけなのでしょうか。

我々が運営する「未来調達研究所」のホームページでは、本メルマガ著者二人の執筆した電子書籍が販売されています。私の「牧野直哉の礎 「機械部品バイヤーの書くブログ」抜粋・追記版 http://bit.ly/Ngjkjk 」で最初に登場する「絶対的評価と相対的評価」という記事を載せています。以下に抜粋します。

「絶対的評価と、相対的評価」

バイヤーの責務は、高い品質、適正なコスト、希望納期通りの納入という三点を実現させることに尽きます。中でも「適正なコスト」は、ほぼ全てのバイヤーが求められていることではないでしょうか。

私は今も現役のバイヤーとして日々、調達・購買活動を行なっています。そして、バイヤーとしての意思決定の多くの場面で常に頭の真ん中へ置く考え方、それがこの絶対的評価と相対的評価との考え方です。

例えば、複数のサプライヤーから購入可能である場合を想定します。サプライヤーA,B,Cの3社から見積を入手します。それぞれ、A:¥100、B:¥90、C:¥80との金額であった場合、この競合の範囲内ではC社が一番安価であると言うことができます。しかし、¥80が絶対的に安い金額かといえば、このアクションでその判断をすることができません。数年前に大きく話題となった公共工事における「談合問題」は、売る側が訴追の対象となりました。が、買う側にしっかりとした価値を数値化する能力が備わっていれば、このような問題は起こらないわけです。民間企業に勤務するバイヤーが、もしサプライヤー同士で談合されたら、訴追の対象になることはなく、バイヤーが裸の王様なるだけです。しかし、私はプロフェッショナルなバイヤーを目指しています。裸の王様は、一番自分として恥ずべき、そして合ってはならない状態です。その歯止めとも言える考え方が、絶対的評価への取り組みです。

事は簡単です。提示された見積書の中身、価格の明細に妥当性があるかどうかを判断するだけです。見積依頼をサプライヤーへ提示する時点で、自分でも見積が完了しており、その自分で行なった見積金額が、一つの価格の判断基準になっている状態をいいます。これは、見積金額の表面の数値にとどまらない、内面へ切り込んでいくことに他ならないのです。

当然、このような取り組みには、いろいろな準備が必要です。その準備の一つ一つを「ほんとうの調達・購買・資材理論」で明文化しているのです。

2004/10/27~29
モノの評価・・・例えば、購入品の価格を決める場合に、絶対的に妥当かどうかを評価するか?相対的に妥当性を評価するか。

私の所属するセクションでは、購入品のメーカー選定と、価格の決定が主な任務となる。量産工場なので、製造する製品のモデルチェンジがあっても、そのメーカーや購入製品そのものが大きく変わることはない。従い、新しく担当するメーカーも、基本的には同僚から担当メーカーを引き継ぐこととなる。

そして業務の中心は、期間ごとに購入製品の単価を決定することになる。前期実績対比、標準原価対比でどのように低減を引き出すかが、バイヤーとしての業績評価の基準となる。私は、評価のプロセスが実に危ないな、と思うのである。

購買する際の相対的な基準点とは、

1.前例実績単価

2.業界の市場価格

3.類似品実績単価

等が挙げられる。私の勤める工場のような量産品がメインの場合は、上記基準を活用することで、極論するとそんなにモノそのものを知らなくても、購買することが可能となる。昨今の厳しい市場環境により、なかなか許される事ではないが、前例実績単価で購買を継続することで、とりあえず可も不可もない評価を得る……なんてこともできるわけである。

相対的な評価をベースとした購買価格決定の大きな問題点は、上記に掲げたいずれにも、購入するモノ・サービスに根ざす明確な根拠が存在しない事である。まぁ往々にして明確な根拠を並べると市場価格より高くなった・・・なんて結果があることも事実である。しかし、前例実績単価の整合性、類似品単価の妥当性なんてものをろくに探求せず、過去を正しいとして鵜呑みにしては、今の時代バイヤーは務まらないと思うのである。

そこで必要となるのが絶対的評価。とても難しく、ある意味ではそんな評価不可能でもある。ただ、この絶対的評価を当たらずとも遠からずレベルでできる事が、真のバイヤーの姿ではないだろうか。

私の場合、機械用の部品を購買している。機械・・・ものづくりの要素としては、

1.金属材料

2.素型材(鋳造、鍛造等によるもの)

3.上記1~3+機械加工

4.樹脂・エンプラ製品

5.1~4を組み合わせたもの

以上の製品を組立て、最終的に製品としている。絶対的な価値評価をベースに価格決定を行うためには、その材料、工法等の知識が必要になってくる。私の勤務する会社では、上記購入製品ごとにバイヤーを置いている。各自、自分の担当した製品について、奥深く探求……する事を求められるのだ。加えて、コスト積算の観点では、原価計算といった経理的な知識も非常に重要である。後は根拠のあるコストを積算する為の、様々なデータ・ネタ集めの為の情報収集能力。こんなものを組み合わせて、絶対的評価を行うのである。

「競合」は手っ取り早く購入価格を下げる有効な手段です。この考え方に異論はありません。では「競合」ができない場合に、バイヤーができることはなんでしょうか。ただ、嘆くだけですか。

サプライヤー同士を競争させる「競合」は、確かにコストダウンを実現させる有効な手段の一つです。では「競合」に際してバイヤーのできる事はなにかを考えてみます。競合できる環境整備こそバイヤーの責務であるはずです。環境が整ったら、あとは双方を頃合い良く、穏やかに煽るくらいですね。私は、競合に関しては、その以前にいかに上手に環境整備ができるか。双方への提示条件を同じくすることや、競合状態を創出するために、サプライヤーを探索することがバイヤーの責務と考えています。そして、この考えを実践の過程で、おのずと苦々しくシングルソースである状態を認識しているのです。

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