夏の日、そして、自殺したYさんについて

夏の日、そして、自殺したYさんについて

今回は、やや例外的に、個人的な話を書きます。しかも、長い文章です。ご
関心のない方は削除をよろしくお願いします。お手数おかけします。

もう7年も前になりますが、ある夏の日、Yさんという女性とビアガーデン
に行きました。そのYさんは、私が主催していた「購買ネットワーク会」の
幹事を務めていた方でした。ふと、ビールを飲むと、Yさんのことを思い出
します。なぜ、思い出、という表現かというと、もうこの世にいないからで
す。

享年34歳、自殺でした。信じられませんでした。

その訃報を聞いたのは仙台でのことでした。私は講演前で、控え室であれこ
れと考えにふけっていたときです。私は宗教的なことを信じません。ただ、
妙にその訃報前には落ち着かなかったことを覚えています。

仙台では雪が降っていました。

やめておけばいいのに、仙台で訃報を受けた後、何を思ったか私はYさんの
名前でメールを検索してみました。なぜだかそうせざるをえなかったのです。
すると、まったく覚えていなかったいくつものメールを読み返すことになり
ました。

不意に私は胸を衝かれ泣きだしてしまいました。

講演の直前までその嗚咽は続きました。

そこで思い出したことがあります。

さらに時を遡ること、10年以上前です。私は毎日、毎日、鬱的な日々を過ご
していました。仕事が面白くない。光が見えない。将来がわからない。未来
が不安だ。いまでこそ私は「モチベーションで仕事なんかするなよ」といっ
た本を書いているくせに、当時はその程度でした。情けない限りです。でも、
毎晩のように部のドアを鍵閉めして帰宅する(すなわちもっとも遅くまで残
っていた)状況が耐えられるはずはありません。

ある雪の降る日のこと。兵庫県の和田岬という駅から寮に帰宅しようと思っ
たら、ギリギリでした。定期券を忘れていたので、カバンから財布を取り出
して切符を買おうと思ったら手がかじかんで、もたついてしまいました。結
果、終電にも乗り遅れてしまった経験があります。

外に出ると、それまで以上に雪が振って、歩いて帰ろうとする若者をいじめ
ているのかとすら思いました。惨めでした。不安でした。怒るにも、何にぶ
つけていいかわかりません。わかるのは、自分が馬鹿なことだけです。

そこから1時間ほど歩いて板宿という駅についたとき。なぜだか途中でビー
ルを買って、ふらふらとさまよい歩いていました。寒くて凍えているくせに、
このまま帰宅できなかったようです。

コンビニエンスストアを見つけたら500ミリリットル缶を買う。そして、
次のコンビニエンスストアまでに飲み干して、次の500ミリリットル缶を
買う。私の精神は普通のそれではありませんでした。

当然ながら、いつの間にか私は酔っていました。

私は止めておけばいいのに、会社の先輩に電話しました。泥酔しながら、職
場の先輩に電話しました。すると、いつも厳しい先輩は一言。「お前のこと、
好きだよ」といってくれました。それ以外に何を話したかを、正直まったく
覚えていません。しかし、理論でもなく、物事の筋論でもなく、成否でも善
悪でも正否でもなく、この言葉がなぜか私を救ってくれたことを覚えていま
す。

くだらないでしょうか。いや、やはり、くだらないかもしれません。

しかし、思い出すのです。短い、一言が私を救ってくれたことを。

Yさんを、私が救えたかはわかりません。もちろん、自殺前に会っていたと
しても、(その様子を微塵も感じさせなかったようですから)同じ結果だっ
たかもしれません。私は冥土もあの世も信じません。ただ、残された私たち
がなすべきことは、図らずもYさんが私に伝えてくれたように感じる「教え」
を行動することだと思います。身近すぎて伝え忘れている感謝の一言を、身
近すぎて伝え忘れている愛情の一言を、身近すぎて伝え忘れている承認のメ
ッセージを、あらためて周囲に伝えてあげること。そして、理論だけではな
く、働く意味を感じてもらうこと。

私に「調達・購買部員の意識改革」というテーマで話す場をいただける方が
たくさんいます。私はまず、一日一日にすべてを捧げたいと思います。その
なかから、一人でも多くのひとが、調達・購買業務の楽しさをご理解いただ
けるように、真摯に語りたいと思います。そしてYさんのような選択をとら
ないためにも。私にしか紡げない言葉で語りたいのです。この仕事は意味が
ある、そして、この仕事は意義があるのだ、と。

そして、確実に、あなたの努力で会社や社会は良くなっているのだ、と。

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