「話が違う!」と、今話題になっているおせち料理があります。(詳細はまとめサイトをご覧になってください)テレビやネットでも大きく取り上げられています。今回の出来事を読者の皆さんは、どのようにお考えでしょうか。

購入者までのサプライチェーンはこうなっています。



<クリックいただくと、大きくすることもできます>

おせち料理を作るお店と購入者の間に1社入っていますね。これはグルーポン・ジャパン株式会社という会社が運営する共同購入を行う会社です。「グルーポンとは」で検索した場合、一番上に表示されるサイトをクリックするとこうあります。

グルーポンとは?
グルーポンは米国の共同購入クーポンサイトです。グルーポン(Groupon)はグループ(group)とクーポン(coupon)を掛け合わせた言葉です。要するに共同購入で割引クーポンを達成しようということです。共同購入のパワーにより通常ではあり得ない割引(5~8割引)が可能となります。

上記の終わり部分には「共同購入のパワーにより、通常ではあり得ない割引(5~8割引)が可能となります」とあります。今回問題となったおせち料理も、通常販売価格21,000円が500名集まると10,500円になるとあります。500名の買う力が集まったことによって、10,500円割引させる力を持ったというわけです。

ほんとうですかね?

共同購入といえば、法人における調達・購買でも採用されるコスト低減手法の一つです。バイイングパワーを拡大して、サプライヤーから有利な条件を引き出そうとする試みです。しかし、異なる法人が集まって行なう共同購入には多くの難題をクリアせねばならず、最終的には骨抜き・瓦解するという残念な末路を辿るのが多くのケースです。

グルーポンが提供する仕組みでは、そんな法人の共同購買でありがちないくつかの難題をクリアしています。おせちを例にして、解説します。

一つ目は、仕様(スペック)の問題。購入側には、全て同じおせち料理が提供されます。

二つ目は、納期の問題。これは小口輸送業者によって、事前に発送日と到着日が決められていたはずです。従い、サプライヤー側からすれば、輸送業者に引き渡した時点で実務は完了します。

ところが、上述した二点がいずれも守られなかった。その上に、配達された現品が、購入時に提示したサンプルの写真とは程遠い内容であった(らしい)ことで、大きな問題となりました。実際にこのまとめサイトには、配達された状態として写真が掲載されていますが、散々食べつくした1月3日の重箱の様です。いろいろなページにも転載されており、削除要請に関する報道もないことから、私は事実として受け取っています。

早期に事態の収束を期して、当事者が事の経緯をHP上で説明しています。

グルーポン・ジャパンの説明

外食文化研究所(今回のおせちのサプライヤー)の説明

グルーポン・ジャパンのサイトには、サプライヤーの能力を見極めることができなったことが説明されています。外食文化研究所のHPには、盛り付けに時間を要したことが書かれています。サプライヤーの生産能力を見極められなかったバイヤーと、自社の能力を過大に評価したサプライヤーの構図です。グルーポン・ジャパンのサイトには、今後の対策として、クーポンの発行元の、提供能力の確認能力を高める旨を宣言しています。まさにサプライヤー評価が不十分であったということになります。

そしてもう一つ、気になる点。

グルーポンのサイトには「通常価格(税込)」と表示されています。しかし、通常ってなんでしょうね。おせち料理って普段は売っていませんよね。それとも、今回問題となったおせち料理は、クーポン提供元が展開する店舗のいずれかで、通常価格で販売されていたんでしょうか。そして通常価格である¥21,000で購入した人はいるんでしょうか。これは、この原稿を書いている時点で、ネットで調べる限り、その事実はありません。

グルーポンのサイトへいくと、こんな表示があります。(1月11日 0:07時点)

これまでの総割引額: ¥6,839,219,221

クーポン購入枚数: 1,214,730

昨年の6月に会社が稼働して、既に68億もの値引きを獲得したとあります。実質7ヶ月です。一ヶ月当たり10億弱の金額になります。この数字はスゴイですね。バイヤーだったら垂涎の数字です。クーポン一枚当たり5,630円。問題は、その母数となる元々の価格、通常価格です。

ここで、グルーポンにまつわるお話をご紹介します。二重価格といわれるお話です。そもそもの価格、通常価格をかさ上げして表示しているといわれています。実際にネット上では「そのような示唆(=実際の提供価格より高い金額設定)を受けた」とのサービス提供者の話まで登場しています。グルーポン発祥の地でもこのように指摘されています。しかし、真実かどうかはわかりません。ただ、確実に言い切れることは、バイヤーであればモノ・サービスの提供元からもたらされる価格情報を鵜呑みにしてはならないという原則です。その原則を踏まえれば、これまでの総割引額は、妥当性がありません。

妥当性がない……それで良いのです。通常価格については定義もないし、原価1円のモノに100万円という値札をつけて販売しても問題はありません。バイヤーというか、購入側が価格の妥当性を見極める判断力があれば良いのです。通常価格対比の値引き額でなく、実際の価格、今回で言えばクーポン価格で提供されるモノ・サービスとの対比で妥当性を判断すればいいわけです。根拠のない値引き価格に惑わされることなく。割引率57%!とあったら、安さへの魅力でなく、そもそも通常価格ってどういう根拠で設定したの?と考えるべきなのです。

もどって、おせち料理問題。グルーポンのHPには、クーポン商品の提供会社に対する事前審査を厳格化致します、とあります。厳格化……私がこの言葉を使うときは、具体的な策が無い場合です。事前審査をどのように具体的に厳格化するのか。これは、サプライヤーの評価という観点で、そこへ秘める難しさを私は十分に理解しているつもりです。実際にグルーポンのHPに掲載されているサービスは、

・ テーマパークの入場券

・ フィットネスの入場券

・ エステ

・ レストラン

・ ダイビング講習

・ 美容院

・ めがね(製品購入)

と多岐にわたっています。これだけ多岐にわたるサプライヤーの審査を厳格に行なうことは至難の技です。もしかすると、グルーポン株式会社が共同購買のほんとうの難しさの理解するのはこれからなのかもしれません。


ぜひ、ついでにこちらも見てください!クリックして下さい。(→)無料で役立つ調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

mautic is open source marketing automation