「いったいどの機種を買ったらいいんだろうか……」

場所は、東京・新宿の家電量販店。店内に掲げられた値札には、価格ともにいろいろなスペックを表す数値が並んでいます。HDD、CPU、メモリー……どの数値を見ても、なにを表しているのかがさっぱりわかりません。そして勇気を持って、店員さんへ聞いてみます。

「この機種は、○○○社の最新機種で、OSも無償アップグレードの特典もついているし、CPUとメモリーのバランスも良くて、お買い得ですよ。ソフトも、パソコンを始めるのに必要なものは全部揃ってますし、一押しですね」

私には、お買い得である理由がさっぱり解りません。わからないけど、とにかく今日はパソコンを買って帰らないと……となんて、妙な使命感だけを持っていました。結果、店員さんお勧めの機種を、深く感じる不安に目をつぶって購入……。これが、私が初めてパソコンを買ったときの状況、今から約15年前の出来事です。いったい何ができるかがよくわからないままに、¥198,000のパソコンを買ったのです。まったくバイヤーらしからぬ買い物でした。

そんな私でも、時の経過とともに数台のパソコンを購入しています。2003年頃からは、外出時にもパソコンを持ち歩くことが多くなりました。ここ数年では、外出先でも、携帯や無線LANを使用してネットへ接続しています。出張先の空港や駅、電車のなかでも、コーヒーを飲みながらパソコンへ向かうことが多くなっています。

初めてパソコンを買って以来、同時にいろいろな雑誌や文献を読み漁りました。まずは、どうやってパソコンを使うのか。そしてパソコン活用に長けたユーザーの使用法を目にして、少しでも便利で効率的な使用法を模索したのです。しかし、触れる情報に対して、実際に便利さを実感することはそんなに多くありません。しかし今現在も、自分のスタイルにあった効率的な活用法を、今でも探し続けています。効率的なパソコン活用法を探し続ける理由、それは一刻も早くパソコンの前から離れ、自分をパソコンから解放するためです。

パソコンやインターネットは、あくまでも道具です。パソコンが、今自分が抱えている問題をすべて解決してくれる訳ではありません。自ら行ったパソコンへのインプットに対しては、ある法則や考え方に沿った答えを出してはくれます。パソコンとは、あくまでも自分が行った入力という作業に対して反応するツールです。パソコンでの一連の作業を効率化する目的、そして沢山の付加価値を生むためには、インプットする材料を確保すること、そして確保した材料である情報を選別し理解するという、自分へのインプットが不可欠になるわけです。

当然、インプットに必要な情報をパソコンへ求めることもできます。インターネットへ接続していれば、世界中のあらゆる情報へアクセスすることが可能です。事実、私も何かに困ったら、以前は書店へ飛び込み、いろいろな文献を読んでいました。今はまずGoogleで、疑問に思った内容をキーワードで検索します。そして、必要な文献があればそのままアマゾンへオーダーする、といった使い方をしています。届いた本は当然、読まなければなりません。時には、その道の専門家に会って話を聞いたり、講演を聴いたりすることもあります。又、交流会であったり、勉強会であったりといった場所へ出向くことでインプットのネタを得られる事もあります。本を読んだり、人に会って教えを請うたりするには、パソコンの前を離れる時間を創出しなければなりません。でなければ、こんな状況に追い込まれてしまいます。

「メールなんか、読んでいられないよっ!」

職場でこんな怒号を良く聞いていました。発言の主いわく、メールが多すぎて読み切れない。だから大事なことは電話してくれないと困るっ!とのことでした。確かに、画面に真っ赤な未読メールばかりが残っていると正直うんざりします。少し職位が上がれば、日中は会議に忙殺、会議が終わると待っていましたとばかりに、いろいろな相談事が舞い込みます。なかなかメールを読む時間がとれずにいると、未読数が膨大になります。スクロールしてもしばらく赤い未読メールが続くと、モチベーションが著しく低下するわけです。

しかし私は、その発言の主がインターネットでいろいろなページを訪れていることを知っています(監視しているわけではありません、座っている位置関係で、目に入るのです)。時には、新しいサプライヤーを探してはいるのでしょうけど、テレビの番組表であったり、ニュースであったり、そういったページを見ていることが多い。そのような時間に、マウスから手が離れることはありません。ホームページを見る為にブックマークからリンクをたどる時にキーボードは不要ですよね。先ほど文句を言われていたメール送信の主が、そのような実情を知っているかどうかはわかりません。しかし、ほんとうに時間がないのかなとはどうしても思ってしうのです。

ここで、インターネットにあふれるホームページと、自分のメールボックスにたまったメールを対比してみます。

インターネットのホームページは、一般に多くの人を対象にして書かれています。ブログなどは、読み手よりも書き手の都合で書かれている場合が多くないでしょうか。一方、メールは仮に写しであったとしても、送信者の受信者に「読んで欲しい」という意思が存在します。わざわざメールを送るということは、一般に広く読んで欲しいのでなく、受信者に読んで欲しいのです。インターネット上のホームページとメールとでは、その情報の持つ価値に自ずと差が生まれると考えるのが妥当ではないでしょうか。

大量なメールを目の前にしたときに「読み切れない」とあきらめてしまうか、何か効率的な手法を見つけることですべてに目を通すか、この違いだけでも自分へのインプットに大きな差が生まれます。一日の労働時間を、メールを読むことだけに費やす事はできません。バイヤーであれば、訪れたサプライヤーとの面談や、社内関連部門との打ち合わせ、職位が上になれば、会議も多くなります(会議の多さは、これはこれで大きな問題です)。しかし、メールによってもたらされた情報を持たずして、サプライヤーとの面談であり、打ち合わせや会議に出席することは、私にとっては武器を持たずして戦いに臨むようなものです。自ら「裸の王様」を演じるがごとくです。

私が大量のメールに頭を悩ませたときに取り入れた効率化手法は、ショートカットによるメールに関する一連の操作です。GUI(Graphical User Interface)によってパソコンの操作は簡単になりました。パソコンを一般に広く普及させることに大きく貢献したのです。しかし、例えば今回のメールを読む、必要に応じて返信・転送するという一連の動作では、マウス⇔キーボードとの間で手を動かさなければなりません。これを、すべてキーボードで行うためにはショートカットの活用が不可欠です。ちなみに、私が現在活用しているメールソフトは、業務ではLotus Notes、プライベートではGmailです。両方とも、かなりの部分でショートカットによる操作が可能です。Gmailを例にすれば、受信メールの一覧画面から、特定のメールを選択して、開き、返信画面を開いて、返信文を書いて、送信するという一連の指示をすべてショートカット(キーボード)で行うことが可能です。キーボードとマウスとの間は、離れていたとしても十数センチ、キーボードの端からは数センチの距離です。しかしマウス⇔キーボード間の手の動きをなくすだけで、メール処理(読む、返信する、転送する、削除する)のスピードは格段に向上します。

すべてのメールに目を通すことは、個々のメールに対していちいち判断することです。返信する、転送する、削除するといった判断は、ビジネスを進める上での一番身近な意思決定です。多量のメールを処理することで、情報収集、判断、そして意思決定というビジネスパーソンに必要な一連の行為を早く的確に行う訓練を行うことが可能になります。

私はメールを読まないこと、それは結局、もたらされた情報の重要度を判断すること、そして反応することを放棄することです。判断せず、反応しない人にはどんな状況が待ち受けているでしょうか。それは、もたらされる情報の減少に繋がります。良いのか、悪いのか、情報を送ってくれた事へのお礼すらしないわけです。「あの人、メール読んでないからね」なんて評判は、現代のビジネスパーソンとしては致命的な烙印といえます。情報量が少なくなることは、より状況判断を困難にします。最終的には的確なアウトプットの難しくするのです。

メールの受信量は、貰っているサラリーに比例して大きくなります(当社調べ)。それだけ、指示されることに加え、報告を受けること、連絡されること、相談されることが増える、だからこそ高い給料を貰う価値があるのです。配下の人間が一時間ついやして作成した書類を、一分間で読み、褒め、問題点を指摘し、今後のやるべき事を指し示す、それが上位者の役目であり、責任です。その前提条件であるメールの受信をないがしろにすることはできないはずです。

メールが多すぎると嘆く、まさにその瞬間にも一通のメールに目を通すことは可能です。そして、マウスへの手の移動をなくすこと、メールで使用する定型句を日本語変換ソフトに単語登録することで、情報提供へのお礼など10秒もあれば打って発信して、次のメールを読み始めることも可能です。自分一人で効率化を進めれば、早く帰ったり、同僚と話したり、といった時間が生まれます。効率化とは、そのように行ったことで何らかのメリットが生まれなければ継続できません。

パソコンやインターネットが、一般に広く普及してまだ10年ほどしか経過していません。今は、パソコンが登場する前の仕事の進め方と、登場した後の進め方が混在している状態です。しかし、今後いわゆるICT技術は使いこなして味方につけた方が仕事は格段に進めやすくなります。しかし一方で、パソコンに向かっているだけですべての仕事を進められるわけではありません。よく考えてみてください、このようなツールを使えば、会議だって自宅でそれも無料でこなすことが可能になります。しかし、なぜ毎日満員電車に揺られて会社に行くのか、について考えてみます。オフィスという場で一堂に会することに未だ意義を見いだしているからではないでしょうか。そのような場で、ただパソコンへ向かい続けるのはもったいと考えるべきです。パソコンに向かう作業をできるだけ効率化して、早々に終わらせる。そして、同僚と話をする、メールの内容を部下に確認する、直接口頭で指示を出してみる、上司に直接口頭で話をする、そんなコミュニケーションを実現するためにも、パソコンの前から一刻も早く立ち去り自分をパソコンから解放すること、そのためにも、パソコンで行う作業に効率化が必要だと考えるべきなのです。


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