●平成の開国とバイヤーの進むべき道

今年最初の通常号です。今回は、前回の続きでなく、2011年(平成23年)を、バイヤーとしてどのように進むべきか、とのお話をしたいと思います。

1月4日に菅首相の年頭記者会見がありました。記者会見のマスコミからの評価は非常に手厳しいものでした。しかし、話した内容の中には、我々バイヤーにとって注目すべきキーワードがありました。

記者会見は3つの理念から始まりました。

平成の開国元年としたい

最小不幸社会を目指す

不条理を正す政治

私が注目したキーワードは「平成の開国元年」です。ただ、かなり壮大な言葉であるにもかかわらず、具体的な開国のビジョンは示されていません。TPPに関して、6月までに最終的な判断を下す、それだけです。

開国とは2つの意味があります。

①新しく国をつくること。建国。

②外国との交流・通商を始めること。(鎖国の対義語)

今の日本には、どちらの意味も当てはまりますね。バイヤーとしては、②の外国との交流・通商を始めることに、より興味を持つことができます。残念ながら、総理大臣の年頭記者会見では語られなかった具体的なビジョンと実行の方向性について、語ってみます。

日本人が足枷になる日本企業

テレビ生産の海外委託が強まっていることが報じられています。大手メーカーがこぞって人件費の安価な海外メーカーへ生産を委託する動きを拡大しているのです。

日本企業に勤務している方は、電機メーカーでなくとも肝に銘じてください。日本人従業員が、日本企業の競争力を奪っている、そのように経営層は捉えているということになります。

これは単純に、日本人の生み出す付加価値<人件費との構図です。これは、我々バイヤーにも当てはまります。私は近隣アジア諸国のバイヤーとも一緒に仕事をしています。モノ・サービスの提供可能なサプライヤーに目星をつけ、仕様書や図面を送って、見積を貰い、交渉して価格決定を行なうといった典型的なバイヤーの業務プロセスに関して言えば、日本人バイヤーと海外バイヤーの能力に差は有りません。海外バイヤーの人件費は安い、そして日本人バイヤーの人件費は高いのです。

競争が足枷になる日本企業

バイヤーにとって、競争の存在は不可欠です。しかし、必要以上の競争、いわゆる過当競争によっても、日本企業は足を引っ張られています。先ほど例示したテレビにしても、ニュースに登場した日本企業は3社あります。それ以外にも、数社メーカーが存在します。それに比べて、韓国では2社です。グローバルマーケットの攻略には、1億3千万市場での競争でなく、数十億を対象とした競争が必須です。日本企業は、国内でも激烈な競争にさらされているが故に、海外への展開が遅れている……そんなことを言っているうちに、新興国企業に市場を席巻されてしまいます。事実、そうなっており、日本企業が出遅れている国もあります。

政治・行政が足枷になる日本企業

第二次世界大戦後の日本経済の復活を称して「東洋の奇跡」と言わしめるほんとうの理由を御存知ですか。最近、ドラマ化されてもいますので、ご存じの方も多いかもしれません。

「経済一流 政治三流」と日本は言われてきました。実際、戦後の高度成長といっても、日本産業の成長によって、市場を席巻されそうになった国は、必ず政治的な横やりを入れてきました。いわゆる貿易摩擦問題です。しかし、その度毎に新たな産業が勃興し、日本は成長を続けてきました。政治的な横やりを経済が押し返してきたのです。最後には、個々の産業対象でなく、日本全体の競争力を低めるための1985年のプラザ合意です。どの時代でも、経済的な勝利の前に、政治的な敗北が横たわる構図は変わっていません。そして最近では、法人税の問題が取りざたされています。そして今、政治的にも経済でも負ける日本があります。

この国の首相が行なった年頭記者会見での言葉「開国」。上記の3つの足枷を踏まえれば、日本との縁を絶ちきること、それが再生への近道になることがご理解頂けますよね。といっても、実際に日本国内に居を構えた企業がどうやって日本との縁を絶ちきるかです。

私は、バイヤーとしてどのように会社を海外へと開くか、だと考えています。

市場のとらえ方一つにしても、日本国内をターゲットとすると完全な縮小市場です。限られたパイの奪い合いなので、自ずと競争は激しくなります。ところが、飛行機で三時間足らずの場所に日本の10倍とも言われる市場が存在します。売り・買いいずれも魅力的な市場です。今では「売り」の方の立場が強いですね。

そして自分達の仕事にしても、より付加価値の高い仕事へのシフトする必要があります。そのためには、業務プロセスを掌握して、付加価値の低い部分をアウトソーシング、時にはオフショア化することも必要です。端的に言えば、単純労働のバイヤーから、複数の人件費の安いバイヤーを活用する側にまわったり、バイヤーの多能工化を図ることです。もちろん、実務経験に裏打ちされた実力は必要です。その上で、マネージメント能力や広範囲への知見が必要になってくる。そして業務プロセスを掌握する分析能力も必要となんでもかんでも、あれもこれもとなります。

それでは、具体的にバイヤーとしてどのように会社を海外へ開くか。

日本人の海外渡航者の総数は、15百万人です。人口の10%強。私は、日本は貿易立国と思っていましたので、この数字は随分と少ないと感じています。主立ったアジアの都市で、日本人を目にする機会は多いんですけどね。

2006年のデータですが、海外旅行者数のデータがあります。

日本 海外旅行者数 1740万人  13.6人/人口千人当たり

英国 海外旅行者数 6649万人 110.4人/人口千人当たり

米国 海外旅行者数 6350万人  21.4人/人口千人当たり

人口の総数は、米国は日本の2.5倍、英国は日本の1/2です。英国人の海外渡航機会の多さに驚きです。米国の場合は、国内にも十分に大きな市場があります。しかし、人口千人当たりの渡航者では日本の倍近い。

この数値が、イコール開国できていない事に結びつけるのは少し乱暴かもしれないですね。しかし、それだけ異文化を見ている国民が少ないことになります。

そして最近20代の若者は海外へ行かないみたいですね。実際に日本人の留学者数も減っています。私は、これは20代の若者に原因があるわけではなく、そんな機会を奪っている/チャンスを与えられない年長者の責任であると考えています。

実際にバイヤーとしてどのように会社を海外へと開くか。海外の売り先、サプライヤーへ自社の存在を知らせるにしても、海外を訪問するにしても、です。先立つものが必要になりますね、予算です。自分で存分に仕事をするには、それなりの先行投資が必要です。私の友人で、自社のHPを中国語化するのに約30万円費やしたとの話を聞きました。一回、東南アジアや中国に出張するにも、それなりの数十万円の費用が必要です

バイヤーとしてどのように会社を海外へと開くか、それには予算です。まず、自分で自由に使える予算確保を行なうことが必要です。予算がない、それはそう発言する人に実力がない、そういうことです。予算が確保できないのは自分の実力不足だと強く認識して、計画をたて予算を確保することが、バイヤーとしてどのように会社を海外へと開く第一歩だと思うのです。


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