2009年は、壮大な、それでいておままごとのような恋愛を、一つ終了させました。あ、そんなことは私事ですから、ご興味ありませんね。それに、その辺のことは「激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ」のなかでも少し触れましたから、もう繰り返しません。ああ、どうしようか。といっても、前を向いて歩いていくしかありませんよね。ただ、世の中がいかなる不況でも、日本という国が凋落しようとしていても、個人として「ありがとう」「愉しいね」と言い合える関係を持つこと以上の愉悦はありません。もちろん、仕事上で成功したり、お金を稼いだり、ということも重要です。ただ、まずは目の前の人を幸せにできるかどうか、に肝要があるように思います。さて、そんなことよりも2010年の話をしましょうか。いま、2010年という「得体の知れない何か」がやってきました。2000年から2009年までが、10年間ですから、新たな10年の幕開けということもできます。そこで、私が2010年の最初に申し上げたいテーマは二つです。 1.異業種間競争時代の幕開け製造業以外で、私が関わっている業界の話から。出版業界は、2009年の売上規模が2兆円を割り込もうとしています。これがどの程度の「凄さ」かというと、1997年頃には2兆6000億円(物価換算)くらいありましたから、その落ち込みの酷さがわかりますよね。では、単にみんながお金を使わなくなったかというと、そうではありません。「若者の活字離れ」と言っている論者は阿呆です。いや、すみません、言い過ぎました。現実を一側面しか見ていません。むしろ、メール、携帯やフリーペーパなどで活字に触れる機会は増えているのですよ。従来の出版社というビジネスモデルができなかった「対個人への直売」を実現したのは、「携帯小説家」たちであり、Amazon等に代表されるインフラ屋さんでした。Amazonの携帯リーダー(電子書籍端末)の「kindle」を使えば、一瞬で電子書籍が手にはいるのですよ。全米では、300万台を突破したといいますが、それにとどまらないでしょう。SONYも参入し、電子書籍端末の規模は大きくなっていくはずです。新聞紙上では、「Amazon vs SONYの戦い」となっていますけれど、これは違いますよね。明らかに、従来のビジネスモデルである「紙業界」と「電子業界」の戦いです。この異業種間競争を読み違えてはマズいと思います。マクドナルドが100円コーヒーで戦っていた相手はどこだったでしょうか。ロッテリアやウェンディーズではありませんでした。喫茶店です。「人々がくつろげるスペースを提供する」という商品を販売していました。これも異業種間競争の始まりです。しかし、これも残念ながら、メディアでは「ハンバーガー業界内での戦い」でしかありませんでした。違うだろ、です。さらに、2010年からは自動車メーカーが戦う相手は、ほんとうに他の自動車メーカーなのでしょうか。これほどハイブリッド車が勃興し、モーターとバッテリーが最重要部品になったいま、自動車メーカーが戦う相手は「モーターメーカー」と「バッテリーメーカー」かもしれません。それらの業種が海外のどこかのメーカーと組んで、先端ハイブリッド車を作る可能性があります。いや、作るだろう、と申し上げておきます。これも異業種間競争です。その他、資生堂と花王という異業種間でも、争いが起きています。シャンプーと化粧品というそれぞれの牙城を切り崩そうとしてするものです(「TSUBAKI」などをご覧下さい)。ただ、これ以上の説明は止めておきます。いたるところに、異業種間競争が起きていることだけは注目してもらいたいのです。 2.LCB時代の幕開けいよいよ、現実になった感があります。何がか、ホワイトカラーの安賃金化です。かつて、私は「机を叩くだけのバイヤーならば、その給料で5人分の中国人を雇えば良いではないか」と言いました。そのときは、自戒を込めて、そして鼓舞の意味を込めていたのです。しかし、いよいよ日本の構造的不況が、それらを実現化させてしまうことになりました。残業カット、不本意な異動、ボーナスの激減……それらが正社員を飲み込んでいます。これまで、「正社員は将来の企業の発展にむけて不可欠な存在である」と言っていた企業が、ですよ。不況になり、固定費の重さに耐え切れない企業は、いよいよ「本音と建前」を使い分けることができなくなったようです。要するに、「不要な人には、安い給料を」「必要な人のみ、留まってほしい」という露骨な本音が表出しだしたというわけです。ある意味、当たり前のことが起きているだけなんですよね。LCCという言葉があります。ご存知の通り、「ロー・コスト・カントリー」のことです。違う訳文もありますけれど、「コストが安い国」という意味で捉えておきましょう。それらLCCからの輸入が叫ばれています。そこで、次は、「ロー・コスト・バイヤー」の時代がやってきます。直接材・間接材・サービスをLCCに頼り出していて、なぜホワイトカラーだけはLCCに頼らないのでしょうか。ありえませんよね。誰だってできる仕事をやっているだけならば、なぜそれがLCBに流れないと言えるでしょうか。LCC(low cost country)とLCB(low cost buyer)への移行。これは、現実です。バイヤー間でも、意識する人としない人では、凄まじい格差が出ていきます。これは、給料という側面から表れ、次々と領域を変えながら表出していくでしょう。おそらくそのトラップから抜け出すには、「質」と「量」と「領域」を意識せざるをえません。すなわち誰もできない高いレベルの仕事を真摯にこなす誰でもできることを、人並み以上にたくさんやる誰も関わらなかった領域で活躍するこれが、1.の異業種間競争にも通じるものだと私は思います。もしかすると、バイヤーの敵は、他のバイヤーではないかもしれません。海外のバイヤーですらないかもしれません。インドあたりで、調達・購買の業務をロジック化し、ソフトを生産しているところかもしれないわけです。企業というものはムダなお金を払うことができなくなっているわけですから、その事実を逆から考えれば、「どういう人材ならお金を払っても良いか」という思考ができますよね? 2010年とはそのような思惟を重ねる良いキッカケになると思うのです。安い人材はより安くなり、高い人材はより高くなる。この時代的背景を前に、いかに学び行動するか。それが問われているはずです。そして、2010年はこれまでにない激動が襲うはずですが、そんな社会的傾向とは別に、私たちだけでも愉しく満足できる1年を創りだしましょうね。いや、私は、その気しかありません。2010年もよろしくお願いします。 ぜひ、ついでにこちらも見てください!クリックして下さい。(→)無料で役立つ調達・購買教材を提供していますのでご覧ください