震災の影響は留まるどころか拡大の一途です。バイヤーである読者の皆さんも、日々奔走されていることと存じます。ほんとうにお疲れ様です。どうか、厳しい中でも体調にだけは気をつけてください。そんな中で、先日開催した調達・購買「私塾」では、通常よりも欠席率が低く、会場もほぼ満員でした。そんな状況を、志の高い優秀なバイヤーの存在と重ね、とても嬉しく感じました。まだ日本も、日本人も捨てたものじゃない。こんなときだからこそ、そう思いたい。そういった意識が、私の中で大きくなっています。そして同時に、捨てたい分野にも、敢えて目を向けています。

ここ数日、震災の被害に追い討ちをかけるような人災ともいえる犯罪の報道を目にします。

金庫の4千万円盗難 気仙沼信金、津波で電子ロック損壊

大村のコンビニ募金箱盗難:容疑の3人を逮捕 /長崎

震災つけ込み犯罪 注意

上記以外にも、現地で不足するガソリンの供給を再開させようとおもったら、給油機の料金収容部分が壊されていた。ガソリンの給油待ちの列に整理券を配布してお金を騙し取ったなんて事件もあります。

震災前に東北、具体的には仙台が注目されていた事件を思い出してみます。携帯電話を使ったカンニング事件です。このメールマガジンでも取り上げました。犯罪としては、敢えて申し上げれば、たかだかカンニングです。それも簡単に足がつく(=犯人が割り出せる)方法によるものでした。私は、あっさりと犯人が特定されたことに違和感を覚え、無知の恐ろしさを、このメールメールマガジンで述べました。

さて、震災で被災した地域に追い討ちをかけるような犯罪とカンニング事件。こういう比較をする媒体もないでしょうから、あえておこなってみます。どちらにより問題があるでしょうか。社会的影響、悪質性……どう考えても、前者ですね。しかし、震災による惨状が相対的にニュースとしての価値を落とし、カンニング事件とは比較にならないほどに小さな扱いです。

一方、今回の震災に際しての日本人の行動について、世界中から様々な賛美を受けています。避難所にはゴミがなかった、穏やかに行列を作る人々、略奪など絶対(never)に起こらない……等々。日本人は、今回の震災によって世界から新たな尊敬の念を得た、なんて記事もあります。確かにヘリコプターから投下される救援物資を奪い合うことはありませんでした。しかし、冒頭に示したいくつかの事件や、震災に関係なく衰えることのない振り込め詐欺に代表される犯罪は確かに存在します。これは歴然とした事実です。

日本を代表する経済新聞では「第三の奇跡」と称する特集が組まれています。第一は明治維新、第二は第二次大戦の敗戦、そして今回の被災からの立ち上がりを願っての企画です。二度あることは三度あるともいいますので、是非三度目の奇跡を起こしたい、私はそう願っています。各避難所の最低限のライフラインの維持に中学生や高校生が大活躍しているとの話は、これからの日本にとって大いに明るい未来を感じることができる話題です。だから、日本は大丈夫でしょうか。ちょっとまってください。ある数箇所の避難所が全てを映し出しているわけではないです。

私は、一事が万事的な根拠のない日本人賛美論、「日本人ならできる」的な根拠を持つべきではないと考えています。そもそも、冒頭に提示した事件から判断するに、礼儀正しく謙虚で穏やかな日本人と同時に、この期に及んで追い討ちをかけ罪を犯す、そういう人間もいるということを賛美と同列に目をむけ、理解する必要があると考えるのです。

私は、バイヤーにとって唯一重要な感覚を挙げよといわれたら、迷わずバランス感覚と答えます。今回の話に当てはめれば、闇雲に日本人を賛美する必要もないし、むやみやたらに蔑む必要もない。震災後に、いやその前にも起こった様々な出来事を考えると、日本人はかなり極端だと感じる場面がしばしばです。私の身近でも先々週は、どこのガソリンスタンドでも百台以上の車が列を成していました。しかし、先週から平常に戻り、行列もなくなりました。水道水の放射能汚染に関する報道によるミネラルウォーターの買占め騒動をみても、報道する側・報道される側の著しいバランス感覚の欠如が生み出す日本人の一側面とはいえないでしょうか。そして、こういった行動は今回の震災で顕著になったわけではありません。テレビで話題に上がった商品が、スーパーマーケットから消える……そんな事象は、以前からありました。今回は、ダイエットでなく「普段と変わらずに生きる」ことに目的が移っただけの話です。

今回の震災は未曾有の被害を、東北地方を中心にもたらしています。しかし、私が先週訪問した地域では、駅の照明も明るくて普段どおりの生活が営まれていました。一方で、日々の食事もままならない人がいる。既に「日本」とか「日本人」という言葉を主語するにはかなり無理があります。あるサッカー選手が日本人には団結力があるとテレビのCMで語っています。私は団結の方法がポイントだと考えます。決して、国民が全て同じ方向を向く、それを強要することがあってはならない。被災地域に暮らす人を助けるには、何よりもまず普段どおりの生活をすることです。不謹慎かもしれませんが、被災地域で困窮した暮らしをする人々を慮っても、自分たちまで同じような生活をする必要はまったくない、そう考えています。

残念ながら、日々の業務では段々と「普段どおり」とは程遠い状況が明らかになりつつあります。で、あれば、普段を取り戻すアクションと、新しい普段を作るアクションをバランスよく行う必要があると考えています。そのためには、視点を高く持って、あらゆる事象を見てゆかなければと考えています。どちらに極端でもなく、バランス感覚を保ち、双方に目を配る。それが今求められている視点であると考えるのです。

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