先日、あるカンファレンスに出席しました。日本を代表する大企業の調達部門のトップを担う方のお話を聞けるというとっても貴重な場です。

お話の中でとっても印象に残ったのが、インテリジェンス(Intelligence)に関するお話。インテリジェンス(Intelligence)の語彙は、次の通りとなっています。

一般的には「知性」「情報」という意味で用いられるが、軍事用語としては後者の意で用いられ、同じく「情報」と訳されるインフォメーション(information)とは明確に区分される概念。インフォメーションは集めたままの生の情報やデータを指す。一方、インテリジェンスは分析、加工された情報をいう。情報活動では、多くの情報資料やデータを分析・評価して、有益な情報を抽出・加工し、作戦の計画・立案、実行するために必要な知識を提供することが重要。また、情報はその入手方法によって呼び方が異なる。情報提供者など人を介して集める情報をヒューミント(HUMINT Human Intelligence)、通信を傍受して収集する情報をシギント(SIGINT Signals Intelligence)、新聞をはじめ一般に公開されている媒体からの情報をオシント(OSINT Open Source Intelligence)という(『中国新聞』2008.3.17)。また、偵察衛星や航空機・無人偵察機などの画像・写真で得られる情報をイミント(IMINT Imagery Intelligence)という。
(株式会社自由国民社 現代用語の基礎知識2010より引用、赤字は筆者による)

ある会社では、このインテリジェンス(Intelligence)に関する専門のセクションを設置したり、社内ポータルに収集し分析した情報を掲示したりしているそうです。

本来、バイヤーが集まった調達部門とは、営業と同じく社外に広くコネクションを持つセクションですね。インテリジェンス(Intelligence)の前段階である情報は、集まりやすいはずだし、実際バイヤーは多くの情報に接しているはずですね。では、あえて専門セクションを設置した企業には、どんな目的があるのでしょう。

バイヤーに限らず、ビジネスマンは毎日意思決定を行なっています。電話しようかどうしようか、メールを書こうか会いに行こうか……ビジネスマンに限らず、人が生きていれば、意識していなくても意思決定の連続ですね。あぁー今日は結局何もしなかったなぁ~という一日でも、何もしないことを決定していることになります。

アメリカの経済学者ガルブレイスの「不確実性の時代」が日本でベストセラーになったのは、今からさかのぼること32年も前の1978年のことです。その頃から「不確実性」とか「不透明」とか言われていたんですね。この本まで戻らずとも、今は見通しづらい時代です。日々仕事をしている我々には切実です。先を読みづらい、見通しづらい。ただ、そういってもずっと迷い続けるわけにはいかない。この時代、立ち止まることが一番良くない。立ち止まることは罪であるともいえます。では、どうすればいいのか。

日本人は、不確実や不透明に弱いのかな、と感じる場面があります。

今年のISM総会に参加したことは、これまで何度も触れています。このメルマガだけでなく、いろいろな場所で話をしています。そんな中で、私が思う一番残念な反応は、

「どのカンファレンスが一番良かったのですか?」

というものです。私は普段、読者の皆さんと同じようにバイヤーをしています。私の問題意識とは、どうしても日々の業務に引きずられてしまいます。例えば、今だったら、安くない中国のサプライヤー問題(これは別の機会に触れます)とかです。

ISM総会で開催されたカンファレンスの資料は、その過半数を誰でも見ることができます。でも、資料を見て

「このカンファレンスはどうでしたか?」

といった質問を受けたことはありません。それよりも、何が良かったか、悪かったかという判断を求められるのです。私にとって良い=興味深いことも、他人には全く面白くないかもしれない。私は敢えて善し悪しを言いません。それは自分で判断してよって思うからです。しかし、多くの場面でその判断を委ねられる。良い悪いか言ってよと。それはきっと楽だからですね。いちいちWebページにアクセスしなくても良いし。判断を放棄すれば、間違ったときに責任取らなくて良いし。でも、そういう判断を求める人の共通した特徴に、行動しないという特性があります。そりゃそうなんですよ、自分で判断していないんだから。

だからこそ、です。不確実とか不透明とか言われる時代。判断すること、できることは大きな武器になります。しかし、未来は読めないですよね。だから、判断する前に、できるだけ多くの選択肢を、可能な限り短時間で見いだすことができるかどうか。情報をインテリジェンス(Intelligence)化することで、様々な想定が可能になります。いうなれば選択肢を沢山持つ。これがとっても重要になります。選択肢が多くそろえるためには、いろいろな情報へアクセスして、インテリジェンス(Intelligence)化することが必要になるわけです。

そして、ただ選択肢を多くしてもダメです。ビジネスで行なう意思決定の場面、多くの選択肢を見いだしたとしても、すべてを同じタイミングで行なうことは稀です。時系列的に見れば、タイミングをずらして決定してゆかねばならない。そんなときには、全体を見て個々の意思決定を積み重ねた結果として、最終的なゴールを見据えて考えることが必要になります。現在のポジションから、ゴールを設定して、そのプロセスをどのように作り上げるのか。インテリジェンスによって見いだした選択肢というパーツをどのように最終的な形にしてゆくのかが、もう一つのキーになるわけです。いうなれば、ストーリー化です。

不確実や不透明になっている理由の一つに、何事においても複雑化していることが挙げられます。例えば、日本と海外のサプライヤーの価格を比較する場合です。サプライヤーの実力である提示価格にプラスして為替レートというバイヤー個人ではいかんともしがたい要素を加味して考える必要があります。今、この瞬間に一回だけ買うということであれば、リードタイムまで考え合わせた先物為替のレートを活用して判断がすることができます。しかし、購入を継続させる場合、それが年単位であれば、もう博打ですね。では並行発注にするか、その際の数量の分配はどうするか……こうやって少し考えても、どんどん意思決定の場面は増えてゆきます。しかし、妥当性のある意思決定では、いくつもの小さな意思決定を飛び越えることはできないのです。それには、複雑な事を単純に、シンプルにパーツ化することが必要なのです。そのためにも情報を集めてインテリジェンス化することは不可欠です。複雑な問題をバラバラにする能力と、もう一度意思決定として全体をくみ上げる能力、その双方が必要なのです。

なぜ情報を集めるのか。それは、選択肢というパーツを見いだして、全体的なストーリーを構築し、意思決定を行なう為です。私にとっては、たまたま最近読んだ二冊の本の内容が繋がった瞬間でもありました。そんな様々なことを再確認することができたとても面白おかしいカンファレンスだったのです。

参考文献
プロ弁護士の思考術
ストーリーとしての競争戦略


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