30年ぶりの出来事と、ぬきんでるバイヤー

私は新規サプライヤーの開拓を主な仕事にしている。いろいろな商談会にも出席し、千載一遇であるサプライヤーとの出会いのチャンスを探している。自社にフィットするサプライヤーがどこかにいるはず、そう思っている。

そんな私のもとへ、一本の電話があった。ある商談会で配布されたリストにある私の連絡先を見て、サプライヤーの営業担当者がコンタクトしてきたのだ。これも なにかの縁であり、さっそく私も電話の主がどんな会社なのかを確かめる。事業内容を確認すると業種的には私が求めるものとは異なるかも、と思いつつ話を聞 き続ける。さらに話を聞き進めても、ミスマッチは否めない。正直にそう思っている旨を伝えると、それでも一 度面談して欲しいとの申し出。せっかくのお話なので快諾し会うことになった。

実際の面談。まず会社概要の説明を聞く。しっかりした会社と付き合っているなとの感想。しかし聞き進めていても、やっぱり合わないかというより、具体的に何を製造しているのかがまったくわからない。それって具体的にどんなモノですかとの質問にも、その業界特有の専門用語の連続。違う業界の素人に説明できる言葉を持ち合わせていないようだ。持参した会社案内には文字ばかりで、製品の写真もない。保有している設備には、これといった特徴もない。サンプル写真はお持ちじゃないですか、と聞けば、お客様との機密保持契約に抵触するのでありません、とのつれない回答。もうこの頃になると、ほんとうに売る気があるのかな、なんて思い始めていた。しかし、同行していた社長の一言で、目が覚めることになる。

「新規開拓の営業なんて30年間必要なかったんですよ。それでも仕事が回っていたんです。でも今回はちょっと状況が違う。今、いろいろ間口を広げようと思って 、こうやって、これまでと違う業界も回らさせていただいているんです」

私はこの言葉に納得してしまった。経験がないならしょうがない。せっかく来てもらったのも縁だしと、あの手この手で先方の製品を理解することにした。先方も一生懸命説明してくれた。やっとの思いでどんな製品か を理解することができた。そして、かなり遠いなぁと思いつつ、ある製品を見積依頼することにしたのである。

そんな面談が終わり、ある一つの考えが浮かんだ。30年間営業したことがない……これって、特別じゃないんじゃないか、と。日本の主要製造業のバイヤーへアプローチしている営業マンたちは、営業とは名ばかりで、ほんとうの営業はしていないのではないかということ。そして多くのバイヤーたちは、ほんとうの営業マンからアプローチを受けた事がないのではないか、ということだ。

30年間営業をしたことがないとは、ちょっと極端かもしれない。しかし私は、この言葉でいろいろな答えを得ることができた。いろいろなサプライヤーとのやり取りの中での疑問に、理解を得ることができたのである。例えば、30年間営業経験がなければ、現在の営業部長をはじめとした幹部・上層部に「営業とは」を語れる人はいない。したがい、実際に現在実務で営業に携わっている営業マンたちにもノウハウが蓄積されている可能性は少ない。技能伝承すべき元々の技能がないのであるからやむを得ないのだ。

そんな心もとない営業マンを目の前にしたバイヤーは、どうすればよいか。営業は、今自らを語る言葉を持たない。ということは、 語る言葉を持たない営業マンの説明は、サプライヤーの実情を映し出していないかもしれない。そんな状況をよくよく考えてみると、もしかすると新規サプライヤーの開拓に努めずとも、既存のサプライヤーの業務内容を見直し、あらためて理解を深めることによって、 あらたな供給能力を見いだせるかもしれない。新規サプライヤー開拓と同じ効果を、既存サプライヤーの今までバイヤーが知ることがなかった能力から見出せる可能性があるのだ。労少なく、新たに最適なサプライヤーを見出せることになる。

そして、もう一つ。心もとない営業マンばかりとすれば、現状はもっと心もとないのがバイヤーではないかということだ。30年間営業してこなかった営業マンを許してきたのは、ほかならないバイヤーであるからだ。しかし、心もとないバイヤーばかりであることをこの有料マガジンをお読みの皆様は、取りあえず利用すべきだ。心もとないバイヤーの中にあって、 一歩ぬきんでる存在になるのはさほど難しいことではないのだ。そんな自分一人の手で、自分一人の力でできる抜きに出る方法をご紹介しよう。

以前、営業部門へ異動してゆく同僚バイヤーへ、当時おこなっていた勉強会で「いけてる営業、いけていない営業」と題して、一方的にバイヤーにとっての営業のあるべき姿を語り合ったことがある。それはこんな結果だった。

いけてる営業マンは、
 ・レスポンスが早い人
 ・バランス感覚がある人
 ・ロジカルな人
 ・相手の立場にたって言動してくれる人
 ・約束を守る人、守れそうもないときにはタイムリーに連絡をくれる人

逆にいけていない営業マンは、
 ・依頼を本気で検討しない人
 ・要求ばかりで、約束を守らない人
 ・連絡しても返答がない人
 ・担当を飛ばしてすぐに上司と話したがる人

興味深いのは、これはいけてるバイヤー、いけていないバイヤーとしても成り立つ内容ばかりだ。しかし今回は、懇意にしている営業マンを上記の9つのポイントで評価してみてはどうだろうか。そして評価の低い営業マンが所属するサプライヤーを再度見直してみるのだ。 バイヤーの評価はイコールサプライヤーの企業としてだったり、リソースの評価ではない。営業マンが問題なのだ。もしかすると、慣れているが故に見逃していたリソースに気がつくかもしれない。 バイヤーにとっては、全ての発注アイテムを、競合他社を凌駕した条件で引き受けてくれるサプライヤーが仮に1社だとしても良いのである。我々バイヤーは、どれだけ新規サプライヤーを開拓したかでなく、多くのサプライヤーを手のひらで転がすことでなく、どれだけサプライヤーの持つリソースを自社の為に効率的に活用できたかで評価されるべきなのだ。 われわれが30年間、まともに営業されてこなかった信じがたい状況を今、逆手にとって利用すべきなのである。

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