しょうもなさと虚構(1)

しょうもなさと虚構(1)

  「なんだこれは!」

そのバイヤーはネットサーフィン中、驚いた。

いつも購入している製品-住友電工製の光トランシーバ-SCMが売られていた。

webで購入できる商社。なんてことのない普通の商品掲示だった。

バイヤーが驚いたのは内容ではなく、価格だった。通常、商社から購入している価格よりも3割安い。

もちろん、そのバイヤーは大量購入はしていない。それにしても3割高はやりすぎだ。

バイヤーは試しに他のサイトにも入ってみた。そちらは2割安。

安いことには変わりがない。

バイヤーはすぐに既存商社の営業マンに電話してみた。「下げろ」というのは芸がない。そこのURLを教え、「ここから購入し、10%のマージンをつけて売ってもらえませんか?そうしてもまだ20%も安くなる」という皮肉をつけて。

すると、営業マンは絶句した。

その後こう言った「様々な要因が考えられます」と。「安定供給のために在庫を持っておりますし、技術的な問い合わせにもすぐにお答えし、不良品が発生してもすぐに対策できる体制ですし・・・」と最後まで単純に自社が高いことへの誇りは失っていないようだった。

バイヤーは電話を切った後に、すぐさま別の取り扱い可能商社をあたり全ての発注先を切り替えた(メーカーとの直接取引はサポート人員の不足のため断られた)。

その後、全く問題は起きなかった。それどころか、平均15%も安くなった。

関係部署にその切り替えを提示し、全てが終ったときバイヤーは得も言えぬ虚無感に襲われていた。

こう思わざるをえなかった。

「なんなんだったんだろう」と。

・・・・

そのバイヤーは私だった。

笑い事かもしれない。

しかし、多くの企業では笑い事ではないかもしれない。

こういう例は標準的に販売されている製品だと分かりやすい。

でも、カスタム品や図面を元にした成型部品でも同じようなことがその後も起きた。私の前述の例で言えば、前任者が政策的に「最も競争力のある商社」と言って憚らないところだったし、設計者にもそう触れ回っていた。

もちろん、むやみに商流を崩すことは支障をきたす、という批判があるかもしれない。

だが、その「支障」というものの本質をずっと考えてきたが、よく分からない。

年始に年賀状が届かなくなったくらいだ。

これも紙代のことを考えれば、ない方がいい。

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