ただの資料じゃねぇか、こんなもん(1)

ただの資料じゃねぇか、こんなもん(1)

  「なんだこの資料は!」

上司は、思わず声を上げた。

購買部内での報告のときだった。

その報告は、その期の各メーカー品種別購入額の実績についてだった。

部下のバイヤーが作った資料の数値がおかしかったのだ。

普通に考えれば、あるメーカーについて品種毎の購入額実績を足していけば、そのメーカーのトータルの購入額と一致しなければいけない。だが、「この品種は何億円の購入、この品種は何千万円の購入」と足していった数字が、そのメーカーのトータルの購入額にならない。

そのバイヤーは焦った。

もちろん、それはバイヤーが偽造した数字ではない。

それぞれの数字は、社内のデータベースにある複雑怪奇な購入額実績から一つ一つ抽出して作成したものだ。しかし、それが経理上の支払額と大きく異なっていた。

「いや、別に意図的じゃないんです」とそのバイヤーは上司に抗してみた。

しかし、「お前なぁ、数字が違っているのに何を言ってやがる」と上司から言われるだけだった。

だから、バイヤーは「でも、それぞれの数字は正しいんです」としつこく反論した。

最後には、上司は呆れにも近い声でこう言ったのだ。

「だから、なんだこの資料は!全然使えねぇじゃねぇか!!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

まさにこの瞬間にもどれだけのバイヤーが購入実績だとか原価低減率だとかいう数字とグラフをこねくり回しているのだろうか?

そして、そのほとんどが最終的な数値が合わず、バイヤーはつじつまあわせに奔走しているのではないか。

私の例でいけば、購入実績と経理の支払にタイムラグがあるためにぴったり一致することはありえないのであるが、それにしても大幅に異なった。

というか、タイムラグをなくしたとしても、この手の数字がぴったり合うことなどないのだろうか?

もはや、購買関係の企画部署には「数字を合わせるスキル」のみで生きている人がいる。

こういう仕事は、この種の人たちを食わせるために存在しているのではないかと思うほどだ。

また、皮肉が過ぎた。

私は購買関係の真の問題は、実は「購買戦略以前に、どこからどれだけの額を購入しているかを誰も把握していない」ことにあるのではないか、と思う。

違うだろうか。

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