グーグルがERPを創る日

グーグルがERPを創る日

米国グーグルは「Google Express」というサービスをはじめました。この
「Google Express」は小売業者と連携したネット上のショッピングモールで、
即日配送をはじめとした対アマゾン戦略の急先鋒とみられています。これま
でアマゾンに流れていたショッピングユーザーを一気にグーグルに取り込も
うとしているのです。

顧客からの受注、そして在庫管理と発送。これらの一連のプロセス管理シス
テムについて、サプライチェーンの用語では、TMS(transportation management
system~物流システム)と呼びますが、その意味で、グーグルのTMSへの進
出が始まったと読み解くことができます。

アマゾンの存在感があまりに大きいために、「Google Express」はさほど目
立ちません。ただし、グーグルTMSは拡大していくでしょうし、アマゾンとの
対決のためにグーグルは次々と施策を繰り出すでしょう。小売業者、あるい
は無数のメーカーがグーグルを販売プラットフォームとして選びたくなるよ
うな施策を繰り出すはずです。アマゾンよりもグーグルをプラットフォーム
として使いたいと、どうやったら思ってもらえるでしょうか。

ここで大胆な予想をします。これまでの同社の戦略からすれば、答えは自明
のように思われます。まずグーグルは子会社として3PLベンダーを買収す
るはずです。そして次に、グーグル版ERPを作成し、それを無料提供する
でしょう。

3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)という言葉があります。企業
の物流全体を請け負うベンダーを指し、顧客の物流を最適化するものです。
アウトソーシングの形で、顧客の配送や在庫管理などについてシステム構築
を含めて手がけます。アマゾンは、生鮮食品販売の「amazon Fresh」では自
社物流網を構築していますし、ドローンの活用をねらい、かつ街中の空きタ
クシーなどを活用した配送網も整備しつつあります。

アマゾンのこういった先行にたいして、グーグルはすべて一から勝負しない
でしょう。まずは、立て続けに有力な3PLベンダーを子会社として買収し、
そこから開発中の自動操縦技術などを注入していくのが流儀のはずです。

アマゾンはキバロボットを買収し倉庫の無人化を進め、さらにクラウドサー
ビス等も先頭を走っています。物流が差別化に使われている現代、このアマ
ゾンに対抗するためには、3PLを買収するなり、グーグル自体が物流シス
テムベンダーにならねばなりません。

説明は不要でしょうが、ERP(Enterprise Resource Planning)とは「統
合基幹業務システム」と訳されるもので、生産、営業、調達、人材、経理…
…などの業務を連携させるソフトウェアパッケージです。この分野にグーグ
ルが参入したらどうでしょうか。データベースのエンジニアも抱えています。
そして、TMS(transportation management system~物流システム)やERP
作成にかかわる優位性がいくつもあります。

まずグーグルは、Google MAPと、そのナビゲート機能をもっています。まさ
にこれらは物流上の最適順路を指示してくれますよね。たとえば何かの荷物
を運ぶ際に、それぞれの手段(トラック・鉄道・空路・その他)ごとの費用
や時間を概算であっても計算できれば、都度最適な物流方法を知ることがで
きるはずです。さらにGoogle Fusion Tablesという地図情報サービスもある
から、物流状況を可視化できます。

さらにグーグルの開発する自動操縦機能が発達すれば、トラックは無人運転
となるでしょう。代わりに作業者はトラック内で仕分けをおこない、トラッ
クから配達先までの荷役のみを行うでしょう。

かつGmailの日付機能とGoogleカレンダーの連携機能を活用できはずです。
サプライチェーン全体の所要時間を瞬時に把握することで、多くの企業でジ
ャスト・イン・タイム納入が可能となります。売り手側の企業はトラックの
ピックアップ期日を把握し、買い手側の企業も生産から出荷までの期日をア
ンドロイドフォンから確認するのです。しかも「Googleショッピング」で同
社はすでに類似の経験をしています。

Googleドライブを活用すれば、商業書類や契約書類も保存ができ、必要に応
じて関係者で共有・修正もできるようになります。もし国際ビデオチャット
が必要ならば、グーグルベースのカメラチャットを使えます。保存が必要な
らばYouTubeにアップロードしておけばいいし、そのうちリアルタイム翻訳も
使えるかもしれません。企業間取引で必要な道具はほぼ揃っています。

そこでふたたびさきほどの予想に戻りましょう。グーグルがERPを作って、
生産、営業、調達、人材、経理といった分野をカバーし、そしてさらにその
ERPを無料で配る、というのは荒唐無稽な予想でしょうか。私にはそう思
えません。

もちろんグーグル以外の企業が参入する可能性もあります。しかし、こうい
った、ERP分野では予想もしなかったプレイヤーが登場することはある種
の楽しみでもあります。それは、企業間取引にまつわる、調達・生産・出荷
などのサプライチェーン分野が注目を浴びる、ということでもあるのですか
ら。

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