修羅場(1)

修羅場(1)

仕事上の修羅場というのは忘れた頃にやってくる。
今までも何度か修羅場というのはあった。仕事の内容に関しての修羅場もあれば、仕事の量に関しての修羅場もあった。
今日は「仕事の量」の方を一つ書こう。
まだ会社に入って間もない頃、私はある工場に勤務していた。そしてこれは滅多にないことだと思うが、その工場は移転することが決定していた。
そしてその工場は、客先に迷惑を掛けないために、丸一年掛けて新工場を立ち上げながら、徐々に移転してゆくという方式をとることになっていた。
バイヤーは一名だけ増員になったが、基本的には現有勢力で二つの工場の面倒を見なければならなくなった。「バイヤーは一名増員」と書いたが、実は倉庫要員は全く増員にならなかった。
先遣部隊として私と部下(会社に入ってすぐに私には部下がいた)の二名だけが、新工場に送り込まれた。初日は、まず誰もいない事務所に入って仕事をしてみた。しかしながら、誰もいない工場の電話が実によく鳴る。皆工場がフル操業をしていると勘違いしているのだった。面倒くさいので電話線を全部抜いて回ったが、今度は倉庫へ納品する取引先の人から呼び出しがひっきりなしにある。
結局二日目から、倉庫で仕事をすることになった。ここからが修羅場である。伝票の処理件数はとっくにこっちの限界を超えている。新しい工場にはなにもないので、手配するものの数が半端ではないのだ。加えて、ひっきりなしに納品がある。そうこうしている内に締め切りがやってきて、単価未定のものの価格交渉をしなければならない。その後に保存書類の整理をしなくてはならない。新しく地元の取引先を開拓しなくてはならない。お客をつれて行ける飲み屋も開拓しなくてはいけない。
いけないいけないばかりで、実際のところ仕事は確実に前進しているのだが、なんだか仕事の洪水に逆らって泳いでいるようで、仕事に一区切りがない。要するに感覚としては、いつまでたってもなにも終わらないのだ!
結局、移転が完了して一年経つまで、この状態は約一年半継続した。
今思うと、他人が作った状況とは言え、馬力のある若い内に、圧倒的な仕事の量と格闘する経験をすることはOJTとしては有効であったようである。実際あれだけの量をこなせば、例え的確な指導がなくても大抵の人間は何かを学び、身につける。少なくとも自信にはなる。
だから、私は後輩にも修羅場をくぐらせたいと思っているのだが、なかなか難しいものである。なぜなら、修羅場はいつでも存在するとは限らないから。
従って修羅場に出会った人は、成長できる機会を授かったと思って、感謝しなければならないのだ!

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