老年者からの遺言(1)

老年者からの遺言(1)

「なんだよ!この製品は!!」

そのバイヤーは驚いた。

ある製品の納入日のことだった。

バイヤーは検収担当者から電話を受けたのだが、その怒り声が普通の怒鳴り声ではない。

その検収担当者は「こんなこと初めてだ!」と叫び、バイヤーに電話をかけてきた。

「あんたに言うだけじゃ終わらせない」。その担当者はまだ怒りがおさまらないようだった。

その検収担当者は、設計者に電話をかけ、そのあとにそのサプライヤーにも電話をし思いつくだけの苦情を言った。

「しかし、サプライヤーは誠意ある謝罪を示さなかった」と彼はバイヤーに向かって不満とも憤りともわからぬ混沌とした感情をぶつけてきた。

そのバイヤーはとりあえず怒りの原因を問い合わせた。

検収担当者が怒るくらいだ。何かの不良があったに違いない。

だが、担当者は「不良以前の問題だ」という。

じゃぁ何なんだ。当然バイヤーはすぐに思った。「こんなに人を怒らせる問題とは一体何か?」。

それでも検収担当者はバイヤーに対して繰り返すのであった。

「こんなこと初めてだ!一体何なんだよ!この製品は。このサプライヤーは!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

私は「そのサプライヤーを選んだ罪」で断罪されていた。

何が検収担当者を怒らせたか。

簡単なことだった。

製品のパッケージを開けた瞬間に「タバコの臭いがした」というのだった。

正直、私にも衝撃だった。いや、そんなことくらいなんだってんだ、というのはたやすい。

しかし、である。お客の信頼を失うことなど簡単なのだ。

もし、その製品が直接お客のところに届いていたとする。そして、お客先の担当者が箱を開ける。そしてタバコの臭いがするとする。

きっと私たちの企業の信頼は一瞬にして失われていたことだろう。

検収担当者は「こんなの品質以前の問題だろ?」といった。はるか20歳も年上の担当者である。私はただただお詫びするしかなかった。

その製品は精密部品である。具体的に書けないことが悔やまれる。その種の部品を作れるサプライヤーはごくわずかだから、細かく書いた瞬間にすぐ原因元がわかってしまう。

ちなみに、おそらくそのサプライヤーであろうところの方がこのメルマガを読んでいることは興味深くもある(なぜならその人は私に応援メールをくれた!)。

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