調達改革が狙うもの

調達改革が狙うもの

先日、ソニーについての、刺激的な報道があった。「ソニー部品調達改革急ぐ、調達先半減前倒し」という見出しだった。同社は以前から調達先を半減し、それによってコスト削減を図ると明言してきた。それをさらに前倒しし、本気の姿勢を内外に印象付けようとしている。

ところで、この調達改革の急進を別の角度から説明してみよう。

昨年、ビッグ3のGMが巨額の赤字を出してしまった。その金額は3兆円にも登った。恐ろしい金額である。かつてトヨタ自動車が1兆円の利益を叩きだしたときにも驚きを禁じ得なかったが、赤字の3兆円である。

しかし、この件は一つの恐るべき事実を明らかにした。3兆円の赤字、とはすなわち固定費分(人件費や減価償却費等々)がそのまま赤字になっているということである。GMは自動車を販売しても、なんと変動費(材料費)分の金額しか回収できていないのだ。GMが作ったクルマは、消費者にとってみれば変動費(材料費)の価値しかなく、固定費分の費用はそのまま赤字へとつながっていった。

これまで売上を伸ばすことに注力していた経営者たちも、こうなると緊急対応としては変動費(材料費)を下げるしかない。これまでは利益を伸ばすには「売上をあげる」か「原価を下げる」か、と言われてきたが、それはもはや二択ではなく「原価を下げる」という一択しか存在しなくなったのである。

このように限界利益(売価から変動費を減じたもの)が極限まで下がってしまう世界においては、変動費(材料費)を下げるしかなくなる。そしてその世界においては「調達改革」は、まさにそのまま「企業の利益改革」にほかならないのである。

製造業においては、そのGMのような自体が頻発している。材料費分しか回収できないような企業は、調達改革に挑まざるをえないのだ。

とはいえ、ネガティブなことばかりではない。私たちはソニーを応援したい。というのも、ソニーにはぜひ調達改革から企業の利益改革を成し遂げた代表例になっていただきたいからだ。

ピンチはチャンスである。特に、調達・購買・資材部門にとっては。

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