調達購買部門だけでコスト削減は不可能

調達購買部門だけでコスト削減は不可能

どのセクションであっても変わらずコスト意識の高い企業こそ、いわゆる高
収益企業です。コスト意識が高いとは、余計な出費をしない、費用管理が厳
格、より少ない支出を目指すといった行動で示されます。そしてもう1つ重
要な特徴は、コスト削減を調達購買部門にだけ押しつけない企業です。

調達購買部門で取り扱い、責任を持つコストの割合は非常に多い、それは事
実です。しかし、調達購買部門が持っている予算が多く、調達購買部門の裁
量で自由に使途を決定できるかといえば違います。調達購買部門は、企業内
の役割分担で、外部支出の「支出先」を定め(サプライヤー選定)、「支出
額」を決定します。(購入価格決定)実際に購入するモノやサービスの内容
や、購入する時期は、社内の別の部門が決定します。モノやサービスの内容
が高度だったり、広範囲だったりすれば、購入価格はアップします。また、
世の中の多くの企業が同じモノやサービスを求め、需要量が供給量を上回っ
たタイミングでの購買も同じです。こういった基本的なセオリーを凌駕(り
ょうが)して、調達購買部門だけで大きなコスト削減を獲得するのは不可能
です。

しかし、一般的に調達購買部門に期待される成果は、コスト削減に集中しま
す。この調達購買部門だけではコスト削減が実現できない実情と、調達購買
部門に向けられるコスト削減への期待のギャップはどのように埋めればいい
のか。私は、調達購買部門がギャップを認識した上での行動が非常に重要と
考えています。このような考え方を踏まえて行動するには、2つのポイント
があります。

1つ目は、社内への影響力、発言力、2つ目は、サプライヤーへの同じく影
響力、発言力です。2つに分けましたが、この2つの影響力・発言力は密接
に関係しています。先ほど述べた社内関連部門の調達購買部門への期待は、
サプライヤーへ発言し、影響力を行使してコスト削減を獲得してほしいと言
い換えられます。そして、サプライヤーも、調達購買部門に期待を持ってい
ます。企業がおこなう購入は、購入にともなう意思決定権が分割されていま
す。優秀なサプライヤーは、そういったバイヤー企業の内情を理解して、さ
まざまな部門にコネクションを持ち、影響力を行使しています。こういった
実情は、日本の調達購買部門の大多数に見られる残念な姿です。サプライヤ
ーがバイヤー企業に広くコネクションを持っているのは、調達購買部門が機
能していない1つの証なのです。一方、調達購買部門が有効に機能している
企業では、サプライヤーの意思を理解し、バイヤー企業としてのニーズをサ
プライヤーへ伝えています。サプライヤーもそういった調達購買部門であれ
ば、決して無視をしたり軽んじたりはしません。無視したり、軽んじたりす
るのは、そうさせる理由が存在するのです。冒頭に述べたコスト削減も、当
然サプライヤーがおこなうべき、だから言わなくてもわかるよね、でなく、
時代や環境に応じた内容や伝え方で調達購買部門がサプライヤーに意識表示
をおこなっているのです。

意思表示だけではありません。コスト削減は企業にとって必要不可欠である
といった抽象論を、なぜ個別のサプライヤーにとって必要なのかをかみ砕き、
具体論としてバイヤー企業とサプライヤーの共通認識にしています。そうい
った行動は、いわゆるサプライヤーマネジメントとして必要な考え方を設定
し、かつ仕組みを整備して実現させているのです。これはバイヤー企業が意
図をもって、サプライヤーをマネジメントしている状態です。コスト削減の
実現も、調達購買部門であれば、実現させる半分以上の労力はサプライヤー
で発生します。サプライヤーは抽象論では動きません。なぜ、サプライヤー
が動かなければならないのかを具体化して伝えなければ動かない、コスト削
減にもサプライヤーマネジメントは不可欠なのです。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

mautic is open source marketing automation