購買2.0の本質(1)

購買2.0の本質(1)

「反論があればどうぞお願いします!!」

営業マンは、バイヤーに当然のごとく言い放った。

ある製品の交渉の場面。どうしても「組み立て費」が高いのではないかとバイヤーが指摘していたときだった。

その製品(アッセンブリー品)は、労働集約型の製品だったから、想定されている労働者の数やラインスピードが肝となる。

こちらが想定しているものとは1.5倍ほど多い金額が見積書には記載されていた。

しかも、他に攻めるところはなかった。

もちろん、論理的にではなく、トータルの金額だけを見て「安くしろ」ということもできただろう。

しかし、できるだけそのような手法をとりたくなかったそのバイヤーは要素で値下げ可能なところを探していった。

すると、その営業マンは待ってましたとばかりに、説明を開始し始めた。

この組立工程がどれだけ考え抜かれたものかであるか。

そして、極限までにスマート化された工程であること。最新のシミュレーション結果で構築したこと。

バイヤーは声を失った。

もちろん、反論することはできる。しかし、話の次元が違うのだ。

少し反論しても、営業マンのが大筋では正しいことを認めざるを得ない。

「これくらいでできるんじゃないの?」などという半端な反論を認めないような雰囲気を醸し出しているその営業マンがそこにはいた。

だから、営業マンは自信満々にこう言ったのだった。

「反論があればどうぞお願いします!!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

現在工程設計の進化がめざましい。

基盤の設計者がPLDやらチップ部品を、パソコン上でシミュレーションできることはよく知られている。

パソコン上のソフトでプログラミングを入力すれば、もう試作品抜きで基盤回路設計まで一丁あがり、だ。

そして、もはや人間という部品もアッセンブリーライン上でシミュレーションされるようになっている。

このようなソフトを使用すれば、作業者の最適動線や作業標準時間を入力し、最適な工場ラインを構築できる。

上記の営業マンの企業もこのようなソフトを利用して最適解を模索していたのだ(こういうことを知っただけで反論した価値はあったが)。

理論で歯向かうものは理論に負ける。力のみで闘おうとする者が力に負けるのと同じことだ。

だから、中途半端な理屈で反論を私の試みは失敗に終った。

もちろん、このようなシミュレーションソフトが現場の勘を鈍らせるという問題もあるのだろうが、技術が進歩していることを無視しては単なる莫迦(ばか)に見える。

ここで、またしても--と思う。

購買が多少技術を学んだからといってどれほど、技術的な話ができるようになるのか。

このようなシミュレーションソフトを駆使して交渉にあたるのだろうか?もちろん、それは素晴らしい。でも、万人には無理があるだろう。

開発購買もいい。技術的なことがわかっているバイヤーは尊敬もされる。

しかし、である。世の中の技術に完璧に追従することなどできない。必要もない。

では、何のために購買は存在するのだろうか、と。

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