遥かなる電子調達

遥かなる電子調達

面白い記事があった。WTO加盟各国は、政府の調達で電子入札制度を導入するという。海外の企業がその電子入札に容易に参加することを目的としており、その結果として安価な商品・サービスを調達することが目的のようだ。

何が面白かったかというと、WTOが「各国とも財政が厳しいから、政府調達を改革して財政健全化せよ」と述べたことだ。

ここには二つの問題が潜むように私には思われる。

1. 財政だけをとらえるのではなく、国全体の経済を考えると、海外企業に発注しない方が、効果がある場合があること

2. 海外企業の与信調査は容易ではないこと

この二つだ。1.から説明しよう。これまで政府調達の高額さが批判されてきた。100億円の調達品も、業者を替えれば90億円で済んだ。やっぱりこれまでの政府調達はダメだったのだ、というわけだ。しかし、マクロ的には必ずしもそうではない。もし10億円の過剰発注が存在していたとしても、その過剰発注はさらなる投資をもたらす。要するに、川下への発注額も増大していくのだ。個人の場合は消費性向とも呼ぶが、企業がさらに川下の業者に過剰な支払いを行う。それが循環すると、日本経済にとって、ほんとうに100億円で発注しておいたときと、90億円の発注時の、どちらかがよいかは実証的にも微妙だ。

もちろん、そんなことは知らないが、財政的に厳しいから少しでも安くせよ、という意見もあるだろう。では、2.だ。もし政府調達で海外企業が増加していくとすれば、与信調査機能が不可欠となる。残念ながらその機能を持っている官公庁はない。それに、自信満々に海外企業の与信を提供できるサービス業者はない(ない、は言い過ぎの側面もあるが、闇社会とのつながりを含めて万全なところは少ない、という意味だ)。もちろん、与信調査は必要だろう。それには莫大なコストがかかる。しかも参入してくる海外企業をすべてチェックするのは簡単ではない。

私は電子調達を否定したいわけではない。難しいし、課題があると言っているにすぎない。タイトルは「遥かなる」とつけた。どんな遠い距離でも、歩いていれば、きっとたどり着く。

そのときに必要なのは、歩くのを止めないことだ。

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