・2010年を振り返って

毎年あっという間にやってくる年末。今年もやってきてしまいました。そして早い方は既に仕事納めをされて、冬休み真っ最中の方もいらっしゃるかと存じます。激烈なお仕事の中で、お疲れもたまっていらっしゃるでしょうから、この機会にゆったりとお過ごし頂いて、疲労を癒し新たな一年への英気を養って頂けたらと存じます。

「暑」2011年を象徴する漢字一文字です。

その年を象徴する漢字の発表が始まったのは、1995年。その年の漢字は「震」でした。阪神・淡路大震災の起こった年です。そして2004年にも「災」これは、新潟県中越地震が発生したことによるものです。その年を象徴する漢字一文字が発表されて16年目、天変地異に関する漢字は三つ目になります。

阪神・淡路大震災や、新潟県中越地震は、その被害の大きさも手伝って、とっても衝撃的な、その年を象徴する出来事でした。今年の夏は確かに暑かった、それは事実です。しかし、暑さを凌ぐような日本での出来事がなかったことも表しています。熱さも喉元過ぎれば忘れてしまうのに、暑さが今年の象徴とは……日本人の一人として、反省せざるをえません。

今年は、日本人の心の拠り所である「世界第二位の経済大国」の座が失われた年でもあります。長らく、政治は三流だけど経済は一流として日本人を支えてきた地位が、お隣の大国に取って代わられてしまったのです。これが、通年の確定値として報じられるとき、きっと一人当たりのGDPでは依然として存在する大きな差を拠り所にする極端な楽観論と、これから来たす暗澹たる日本の未来の始まりであるという極端な悲観論が交錯し、しばらくすると「世界第三位の経済大国(これはこれで事実)」とか言われるようになるわけです。その国の一年を象徴するとして発表される漢字が「暑」ですから、やむを得ません。でも、これで良いんでしょうか。バブル崩壊以降10年過ぎ去った頃に「失われた10年」といわれ、最近では失われた期間が20年、そして今30年への入り口なんてことも囁かれています。規模では世界第三位かもしれませんが、既に内容は一流でないのではないか、そんなことを考えながら過ごした一年でした。そしてそのような状況を打開するために、私に何が不足しているか、と。

・冬休み読書案内

そんな中で、昨年と同じく、いやそれ以上に様々な本を手にしました。最初にご紹介するのは、テレビ番組と連動し大ヒットしたこの本です。既に読まれた方も多いかもしれないですね。しかし、私は生まれてから今まで「正義」についてじっくり向き合って考えてみたことは有りませんでした。自分に不足しているものを探していた私は、迷わず購入し、一気に読み終えました。調子に乗って「調達の正義」なんてことも、トークライブでやってみたりしました。すると、想定外にコンサバなバイヤーが多くて驚かされたり……ともかく、今年読んで一番具体的な成果があった一冊です。



これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
私は、年頭に「恙なく(つつがなく)生きる」という目標を立てました。今年は、年齢から判断(満41歳)して、とにかく一年乗り切ることを目標としたのです。そして、不惑といわれた年齢になっても、あれやこれやと迷い続けている私に、光明を見いださせてくれた二冊をご紹介します。

      

プロ弁護士の思考術 (PHP新書) プロ弁護士の処世術 (PHP新書)
筆者は、日本と米国で活躍する弁護士。思考術(上記左側)は、3年前に発行されたもので、処世術(上記右)はこの秋に発行。思考術は、物の考え方を7つのコンセプトにまとめています。豊富な海外経験に裏打ちされた的確なコンセプトを7つ。私は7つを手帳に書いて、何かを考えるときに必ず読み返します。退屈な会議中にも(笑)難しい問題でも、7つのうちどれかに必ず糸口を見いだすことができます(当社調べ)。「思考術」といえば、何か世に溢れるノウハウ本の一つと思われるかもしれませんね。しかし、これほど引き込まれ、納得し、私自身活用しているノウハウ本はないのです。それほどに、素晴らしい7つのコンセプトなのです。

そして「処世術」編。思考術はどう考えるかであって、処世術はどう行動するかとなります。全部で8章からなる内容は、一年でいつ頃読むのが良いか、と聞かれたら、今の時期以外にないでしょう。2011年の自分自身の目標設定に大きな影響を与える示唆を得られること請け合いです。

プロ弁護士~の2冊を読んで、筆者の考え方に共感した私。こうなると、他にどんな本を書いているのかな、と気になってしまいます。もし他にも著書があると、読みたくてたまらなくなる。そうやって巡りついた本がこれ。



ユダヤ式交渉術 (知的生きかた文庫)
夏休みの、やはり読書案内で「ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)ロジャー フィッシャー (著), ウィリアム ユーリー (翻訳)」をご紹介しました。ハーバード流というだけあって、いかにも米国アングロサクソン的な交渉術です。そして今回紹介のユダヤ式交渉術 (知的生きかた文庫)ですが、これはハーバード流に代表される米国式交渉術を否定するかのような内容になっています。数千年間迫害され続けてきたユダヤ人の古典といわれる教えの中に、交渉術を見いだしてゆきます。ハーバード流と対比させて読むとかなり興味深い内容になっています。どちらの術がしっくりくるか。私はユダヤ式の方が腑に落ちました。故に今、ハーバード式をかなり丹念に読み返しています。腑に落ちない方が自分の弱点で有る可能性が高いためです。

プロ弁護士シリーズにも、ユダヤ式交渉術にも、いろいろな他の文献、中には古典や原典と呼ばれる書籍からの引用を見ることができます。

今年の私の大きなイベントの一つに、米国ISM総会への出席があります。その基調講演で話された内容は、いわゆるバリューチェーンと呼ばれる内容でした。現在もハーバードで教鞭を執るM・E・ポーター氏の著書で、バリューチェーンを語った「競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか」が日本で出版されたのが1985年、いまから25年も前のことです。それが今日でも、カンファレンスの基調講演で取り上げられる内容の根底となりうる。長い年月を経過しても、語り継がれる物には、語り継ぐだけの確固たる原理原則が存在することを実感した瞬間です。実は、私は本の存在は知っていましたけど、今まで読んだことは有りませんでした。帰国して早速購入し開いてみると、こんな言葉が飛び込んできます。

「日本の競争優位が危ないーー日本語版によせて」

著者が、日本語版の発行に合わせて記した内容です。一読して驚かされます。今、日本が置かれている状況は、既に25年も前に予見されていたのです。そこには、経営環境の変化へ対応を促す内容が書かれてます。
 



競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか
最後にもう一冊。私にとって交渉論と同じく、どうやったら上手に文章が書けるのか、というのも、未来永劫追い求める物だと考えています。

私の上手な文章の定義とは、なによりもまず「最後まで読んでいただくこと」です。最後まで読めない=面白くない、これは自分の読書遍歴が物語っています。そこで、どうしたら読ませる文章を書けるのかが、変わることのないテーマなのです。

都内の駅には、いろいろなフリーペーパーが置かれています。中でも有名な「R25」の記事の特徴を御存知でしょうか。今日的な話題を取り上げ、800字で簡潔にまとめることがポイントです。これは、多くのテーマも、簡潔さを心がければ800字で表現できることを意味します。800字と言えば、原稿用紙2枚……。そんなことをいつも考えている私に、今年最後の思わぬプレゼントがありました。



小説新潮 2011年 01月号 [雑誌]
「八百字の宇宙」と称して、日本を代表する書き手が800字での表現に挑戦しています。800字でストーリーを展開したり、800号記念のお祝いの言葉を表現したりと、いろいろな試行錯誤が感じられ、短時間で読める興味深い読み物になっています。一流の書き手の800字を真似てみよう!と心に決めたのでした。

それでは皆様、穏やかで良い新年をお迎えになることを祈りつつ……

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