Web2.0から購買2.0へ!!(1)

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  「あのときの監査は一体なんだったんだよ!」

上司は目の前のバイヤーに向けて叫び声を上げた。

あるサプライヤーからの不良品納入の報告を受けたときのことだった。今回もそのサプライヤーのトラブルで工程に遅れが生じてしまったのだ。

さらに悪いことに、そのサプライヤーは、不良品納入が初めてではなかった。

しかも、何度も何度も同じことを繰り返していた。

その製品を担当していたバイヤーは、度重なる不良品納入対策会議に呼ばれては、くたびれていた。

何度もサプライヤーに要求する「納入改善書」やらなんやらの書類群。最初は二度とこのような不具合を出させないようにと奮起していたのだが、じきに疲れてしまった。

そして、その書類が全く意味をなさないと証明するかのように、不具合は解消することがなかった。

「自分の手間を少しでも軽減したい」。

そう思ったバイヤーは、社内の品質関係者を率いて、そのサプライヤーの工場へ監査へ出かけたのだ。

そして多くの改善依頼点が出された。しばらく経ってから、現場を確認しに出かけたバイヤーはその対策をそのサプライヤーが行っていることが確認できた。

そこで、監査チームはこう社内に報告書を提出したのだった。

「監査時の指摘項目の改善により、工場体質が向上したと結論付ける」と。

まさにそのすぐ後に、前述の納入不具合が出たのだった。

しかも、前回とほぼ同じような不具合内容だった。当然のごとくバイヤーの上司は叫んでしまった。

「あのときの監査は一体なんだったんだよ!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

新規で参入させたサプライヤーで起きた数々の不具合が私を襲っているときのことだった。

だけど--、本当はそんな不具合が起きることなど考えることもなかった。そのちょっと前までは。

不良品の納入が始まる数ヶ月前。そのサプライヤーは拍手とともに迎えられていた。

それは、リバースオークションを行っているときのことだった。

既存のサプライヤーやその他国内外のサプライヤーに参加してもらい、最安値を競わせるあれだ。

参加サプライヤーは画面の前で待機する。そして時間が来たら開始だ。バイヤー側の要求に満たす自社製品の価格を入力していく。制限時間は2時間だった。

価格は、どんどん下がっていった。「これまでのコストは一体なんだったんだろう」、とつい疑問に思ってしまうほどコストダウンが達成できたかのように見えたのだ。

そして、最終的に劇的に安いコストを提示し、晴れて採用決定となったサプライヤーがいた。それが前述のサプライヤーだった。

リバースオークションの一部始終を見ていた数人の購買部員は拍手を持って歓迎した。「よかった。こんなに下がるとは」。もちろん私も含め、無邪気に喜んでいたのだった。

しかし、である。そのサプライヤーから納品が始まると同時に、不具合品が多量に入荷した。私の奔走はそこから始まったのだった。

これを聞いてどう思うだろうか?「いや、細かな条件をバイヤー側が提示していなかっただろう」、と指摘する人もいるだろう。

確かにその面は否定できない。

だけど、できるだけ細かな条件は盛り込んでいたし、各種認定(ISOなど)や品質管理も十分に条件の中に入れてはいた。製品の評価も実施するという内容も含めていた。

そして同時にこちら側も十分な評価も実施した。その製品の耐久試験も念入りにチェックしたし、見積もりが「名刺コスト」ではないように何度も打ち合わせを実施した。

ただ、笑ってしまうが、原因はこういうことだった。

多くの規定に従って、その工場では作業標準書を掲げてはいた。加えて、その企業は多くの監査対応の書類を用意していた。しかし、それを読める人がある時期から工場には少なくなっていた。いや、これは皮肉ではない。文字通り本当に「読めなかった」のだ。

リストラクチャリングの煽りを受け、その工場では外国人労働者ばかりが増えてきていた。日本語が読めない作業者ばかりでは、まともな工程など成立するはずがない。

作業を確認するための作業標準書を読むことができないのだ。色々なものを混在して作るようなラインであれば、どうやって対応させることができるというのだろうか。

英語だったら読めるだろう、と英語併記にしていた時期もあったが、なんと「R」と「L」が読めずに誤った組み立てを行う作業者までがいた。

これは実話である。

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