修羅場(2)眠れぬ夜

修羅場(2)眠れぬ夜

異様に早く目が覚めることがある。今日もそんな日。こういう時はもう眠れないので、読書をしたりネットサーフィンをしたりして、通勤電車で爆睡すればよい。
以前、プレッシャーで毎日のように早く目が覚めるという経験をしたことがある。あるシステム立ち上げのプロジェクトに参加した時の話だ。
こういったプロジェクトは始めのうちは現状の業務についてまとめたり、解決策を概略決めたり、システムの講習会に参加したり、と比較的プレッシャーの掛からない仕事が多い。
しかしながら、カットオーバーの日付が迫ってくるにつれ、システム要件の最終決定をはじめマニュアルの作成、ユーザー教育、テスト、マスターの登録、残高の移行などなど、後戻りできない仕事を非常に短期間の間に大量にしかもミス無くこなさなくてはならなくなる。
こうなるととたんに眠れなくなった。夜寝ていても仕事の夢を見るのだ。朝早く起きると漠然とした不安に苛まれるのだ。やることをやっているはずなのに、何か忘れていてシステムがうまく動かないような気がするのだ。
さてカットオーバーの日を迎え、システムは動いた。しかしながら案の定トラブルが続出し、連日深夜まで私とコンサルタントはバグつぶしに追われる日が続いた。ある日の夜10時過ぎ、コンサルタントからの内線電話でかなり重大なトラブルの発生を告げられた私は、あろうことか笑ってしまった。いや、実際にその場では打つ手がなく、私にできることといったら、笑うことしかなかったのだ。そしてこの時にこのプロジェクトは山場を越えたことをはっきりと悟った。
それは、数ヶ月のプレッシャーとの格闘の末、ようやっと私の腹が据わった瞬間だったからだ。そして訳のわからない漠然とした不安ではなく、現実の問題が目の前にあることが理解できた瞬間だったからだ。笑うというのは、それに付随しておこった現象に過ぎない。泣いてもよかったし叫んでも良かったのだ。
実際には問題はこの後もいろいろと発覚したが、この後眠れない日が続くということはなかった。
「漠然とした不安」を抱えた時には、そのままにしておかずにもっと要素を細かく捉え直して「現実の問題」に因数分解してしまえばよい。そしてその問題をひとつづつ機械的につぶして行けば良い。まだ完璧にできる訳ではないが、このプロジェクトから私が得たスキルのひとつがこれである。

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