2日前⑤

2日前⑤

建前はもういい。やりたくないことには「やりたくない」と言え

私は、ちょっと前にある会社で講演をしたと述べた。そして、その時に「バイヤ

ーは本当は安くしたくない」と言ったら多くの人が賛同してくれたとも述べた。そ

こをもうちょっと書いてみる。交渉して値段が下がるのは結構だけれど、本当はそ

んなことを全然したくない。だから多くのバイヤーが、最初に見積もりをもらった

ときに「このまま値段でどうやって上司の許可を得ようか」ということを日々考え

ている。「確かにそうだね」と多くの人が頷いてくれた。

世の中は一般的に建前であふれている。もちろんその理由もわかる。一度偉くな

った人、たとえば部長になった人や取締役になった人が、「自分がバイヤーだった頃

は、本当に惨めな仕事で仕方がなかった」とか「この見積もりを『いかに安く見え

るようにデッチあげるか』ということばかり考えていた」と言うことがあるだろう

か。もちろんいうはずがない。でも、まずは建前を排除することから始めることが

重要である。

たとえば私は仕事に悩んだ時に上司から必ずこう言われた。「自分がやりたいこと

をやれ」。あるいは、「自分が今まで成し遂げたかったことをこの仕事を通じて実現

してくれ」、などなど。これらの言葉は確かに世論に思えるし、どんな本を読んでも

確かにそう書いてあった。「自分の夢を実現しろ」「自分がやりたいことをやれ」。そ

ういうタイトルの本もたくさん出ているくらいで、確かに本当のことのように思え

るのであった。だけど、そもそも仕入れ・購買・資材・調達・バイヤーなどという

ことに携わりたかったわけではなかったので、いったいその職業の枠組みの中で何

をしていたが分からなかった。これは多くのバイヤーにとって共通の思いなのでは

ないだろうか。

だけどあるとき、こういうことに気づいた。「やりたいことやるのではなくて、や

りたくないことをいかに排していくかを考えていく」。このことこそが大事なんだ。

「やりたいことをやれ」というとき、ほとんどの場合その言葉は空疎なものとして

受け流されていく。だけど、「やりたくないことをいかに排していくか」ということ

考えさせたときに、その言葉は本当にリアルなものとしてその人の中に突き刺さっ

ていく。

もちろんこれは、正のエネルギーではない。どちらかといえば、負のエネルギー

だ。だけど人間を負のエネルギーほど動かすものはない。だから、せめて成長・試

行錯誤の段階ぐらいは負のエネルギーを逆に使ってやろうじゃないか。私の下に後

輩が入ってきて自分のキャリアについて悩んでいる時、私は「やりたいことをやれ」、

とは言わなかった。「今、惨めな仕事をしているなら、そのやりたくないことをいか

に減らすことができるかを注力して考えろ」と。そして、「そのいかに減らすことが

できるかということが、将来絶対に役に立つスキルになるのだ」ということ言うと、

ものすごく伸びてきた。

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