7-(8) 下請法を遵守した健全な関係作り「下請法を守りつつ」

7-(8) 下請法を遵守した健全な関係作り「下請法を守りつつ」

今思えば、この処理は正しかったのだと思います。グレーなところをいちいち情状酌量していたのではルールとなりえません。また、疑わしき者を罰することが常に悪いことでもないでしょう。

下請法の精神に反していないといっても、発注後の減額は厳禁です。これは、多くのバイヤーがいまだにやっていることで、再認識せねばなりません。減額してよいときは、納入されたものに瑕疵があったり、納期遅延したりしたときに、さらにそれ相当の理由があるときのみです。原則的に減額はできないと思った方がよいでしょう。

では、私が言いたいのは下請法の批判か。そうではありません。下請事業者と付き合うことは、それなりのリスクがある、という単純なことです。「常識的な取引を実施しているので私には関係ない」ということはできません。下請法の存在が、むしろ下請事業者の取引機会を奪っているのではないか、という批判があるくらい下請法を遵守することはややこしい。いくら意識が高くても下請法に抵触しうることは認識しておくべきでしょう。

特にバイヤーが失敗しがちなので意識しておくべきところは

(1)注文時に必ず価格を合意しておくこと

(2)納入されたときをもって即受領し支払い起算日とすること

この二つです。

(1)は外注工事など、やってみなければどれくらい時間がかかるか、コストが発生するか、分からないときがあります。本来は、両社が合意の下で価格が決定できない正当な理由があるときはやむを得ないのですが、どれが「正当」でどれが「正当ではない」かという線引きは困難で恣意的になりがちです。ここは、割り切って価格を合意し、注文書に記載した後は変えてはいけません。

(2)は一般サプライヤーであれば受入れ検査を実施し、それから検収処理・支払処理となります。しかし、下請事業者であれば、有無を言わず納入された瞬間をもって受領とし、60日以内の支払をせねばなりません。月末締め制度を採用している企業によっては、「受入日」「検収日」などを分けて管理したり、2~3日の検査期間を厳格に定めたりして支払い遅延を防止するところもあるようです。この場合は、まず受領した日を支払い起算日とし、その後に2~3日かけて受け入れ検査を実施し合格後検収処理、そして例えば翌月20日に支払いとしています。これだと、31日に製品を受領して検査に2日かかり月をまたいだとしても、翌々月の20日に支払われるわけで「60日以内」は満たしているというわけですね。

ただ、実務上では「モノが入ってきたらすぐに受領書を発行し、翌月支払いを行う」とくらいに考えてよいものです。もし、不良品が出てしまえば、そこから赤処理をするくらいがよいでしょう。早期支払いは下請法の精神にも合致しているはずです。

なお、受領前に納入製品に瑕疵がある場合は拒否できるということになっていますが、そもそも「受領」とは下請事業者が納入したものを検査の有無に関係なく「受け取る」ということです。受け取り前に瑕疵など分かるでしょうか。

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